アルテア王国物語 第一部

□第六話 エリーとエミリア
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ロイドが〈とんちき亭〉の扉を開けた時、エリーはすっかり酔っ払っていて。

「早く、酒を持ってこんら」

顔を真っ赤にしながら、ふらふらになりながら喚き散らしている。

「いらっしゃいませ」

と元気よくあいさつしてくれるヴィレ。

「あ、お疲れ〜」

エミリアも程よく酔っているようで、眠たそうだ。

「なかなか楽しそうじゃねえか」

ロイドは言った。

自分達が昼過ぎからずっと探していた人物がこんなところで酔っ払ってるとは。

無事でよかったと安心する反面、怒りがこみ上げてくるのだが。

「あ、ロイドら〜」

真っ赤な顔してこちらを指差してくるエリー。

すでに舌が回っていないようだ。

「ロイドさん、珍しいカッコしてますね」

ヴィレは言った。

「ああ、ちょっとな」

ロイドは苦笑い。

確かに、俺にしては珍しい格好に違いない。

なんか気を揉んでも無駄骨のような。

何を言っても応えないだろうな。

ロイドはため息をついた。

「ロイドも座りなよ、そんな所で立ってないで」

千鳥足でエリーは近付き、ロイドの腕に抱きついた。

「捕まえた〜」

とのんびりした声で言う。

「それはこっちのセリフだよ、お姫様」

「ロイド、あの時以来だね」

「ああ、あの時以来だな。お前のせいでこっちは煮え湯を飲まされたんだがな」

「私も怒られたけどね」

あはは、とエリーが笑う。

つられてロイドは微笑んだ。

「さあ、お姫様、お帰りですよ」

と、ロイドは入ってきた扉に手をかけた。

扉の外が何やら騒がしくなっている。

シンを店の外で待たせているのだが、おそらく他の奴らが気づいたのだろう。

「ちょっと待って。少しこのまま」

「‥‥‥おい」

エリーはロイドにしがみついたまま、目を閉じる。

それをガン見しているエミリアにロイドは気づいた。

エミリアは慌てて目を逸らす。

が、聞き耳を立てているというか、こちらのやり取りをかなり気にしている様子。

「帰りますよ、姫様」

ロイドは大声で言った。

「もう、なんて声出すのよ」

エリーはその大声で我に返ったように、ロイドから離れた。

「前は私の言うこと、素直に聞いてくれたのに」

「前と今では状況が違います。私自身も変わっております。それ以上に」

「それ以上に?」

「あの時、痛い目に合いましたから」

「そればっかりね」

エリーはため息をついた。

「分かりました。帰りましょう、王城へ」
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