現世の心

□第三話
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私が屯所に来てから早一週間が経った。



だが、私の存在は新選組の中でも幹部と極一部の人しか未だに知られていない。

他の隊士さん達は、隣にある「前川邸」で待機しているのだという。

だからこの「八木邸」に住んでいる私の事は八木邸にいる人達にしか知らない。




『でもだからと言って何もしないでじっとしてるんじゃなー……』



この一週間、屯所内を出歩く時は、幹部達とご飯を食べに行く時だけだ。


木刀は折れている上、肩は怪我をしている。

いや、怪我の方はもう平気なんだけど近藤さんが「後遺症が残ってる可能性があるからまだ無理をしてはいけない」と素振りをさせてくれない。



このままじゃ、体が鈍って戦いづらくなっちゃうよ……



『仕方ない。庭に出て空気でも吸ってこようかな』


そう思って襖を開けた時、




斎藤「!?」

『きゃあっ!?』




タイミングがいいのか悪いのか、襖を開けた瞬間に斎藤さんがどアップで現れた。



沖田「どうしたの瑠樹ちゃん大声なんか出して」


そして廊下には斎藤さんの他に沖田さんや藤堂さ…平助君がいた。


『すっすみません…!ちょっと外の空気を吸いに行こうと思って…!
本当にごめんなさい!!』

斎藤「いや、俺は何も問題は無いが…」


突然の事で前回の時と同様に混乱しながら、ひたすら斎藤さんに謝罪をした。


沖田「まぁ…ここんとこ一週間ずっと部屋に詰めっぱなしだったし。確かに、それなら空気を吸いに行きたくもなるよね」

『…すみません』

平助「なんでお前が謝んだよ。
瑠樹は別に何も悪い事してないだろ?」

『ま、まぁ…』


平助君、なんかすごい優しい。
正直、新選組は不良の集まりな感じだったけど、実際はそうじゃないのかな。


「あの…大丈夫ですか瑠樹さん」

『あ…千鶴。うん大丈夫だよ』


平助君の陰から男袴を着た少女、雪村 千鶴が姿を現す。

彼女こそ私があの夜見た、浪士に絡まれてた女の子だ。


彼女もあの夜…私と同じように、あの”白髪の男”たちの存在を目撃してしまい、強制的に此処に連行された。


なんでも、半年前から消息不明の父親を探す為に、江戸から来たらしい。

江戸って今の東京だよね…
よく女の足で此処まで歩けたな。多分、今の私には到底無理だよ…


それにしても…


『(近くで見ると、ますます男装に似合わず可愛い顔してるなぁ)』


聞けばこの子も、永倉さんと平助君以外の人に”女”だとすぐにバレたそうだ。(近藤さんも気付かなかったらしい)


当の本人は完璧に化けているつもりだったみたいだけど…(まさか天然?)


平助「とりあえず早く夕飯に行こうぜ。じゃないと新ぱっつぁんが五月蝿いし」

『あ、うん。じゃあ行こうか千鶴』

千鶴「はい!」



そして私達は、他の幹部達が待つ広間へと急いだ。
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