現世の心

□第三話
4ページ/4ページ





夕飯を終え、私は自分の部屋で一人思いに耽っていた。


さっき沖田さん達が言っていた、もう一つの【新撰組】。


斎藤さんは「忘れろ」とは言ってたけど、そう簡単に忘れられる訳がない。


寧ろ"あの夜の出来事"だって………



『………!』




もしかして……




『いや…やめておこ。とにかく今は、さっきの話を忘れる事に専念しなきゃ』


変に深入りすればするほど、命の危険性が高くなる。



でも、忘れようとすると度に、さっきの話が浮かんで大きくなっていく。



『……ああああもう!!』


そして私は発狂しながら頭を抱えた。



ダメだ!!頭が混乱する!!



『風に当たってこよ!そしたら少しは頭も冷える!』


自分にそう言い聞かせながら、暗い庭に出る事にしたが……



『……寒っ!』


身を切るような寒さが、体中に襲いかかる。



そういえば今、新年真っ只中でした。


私がここに来た時は文久三年十二月末。

それから一週間経って新年を迎え、今は文久四年 一月の時が流れている。


『っなんの…!こんなの体を動かせば……!』





「そんな薄着で体を動かしても変わらぬ。風邪を引くぞ」

『きゃあああ!?!?』


いきなり後ろから声を掛けられ、私は体を強張らせる。

今日叫んだのこれで二回目だよ…



しかもこの声は…



『なななな何で斎藤さんが、こ、ここにいいいるんですか!?』


寒さと動揺のあまり、声がどもってしまった…



斎藤「後片付けが終わったので部屋に戻ろうとした。そしたらアンタが庭に出て行くのをたまたま見かけた。

何故その格好で外に出たのだ。風邪を引きたいのか」

『べ、別にそんなんじゃありません…!

ただ、風にでも当たれば混乱した頭も冷えるかなって』

斎藤「頭が混乱…?」

『………………



その……さっきの話がどうしても忘れられなくて…

一刻も早く忘れようとしたんですけど、深く脳裏に焼きついたみたいに……』

斎藤「……………」



斎藤さんは私の話を黙って聞いていた。


『も、もちろん他言するつもりなんて全然ありませんし!』

斎藤「ああ、そうしてもらわなければ困るからな」

『………………』


それから二人の間に沈黙が生まれる。




『……ックシュン!』

斎藤「!……大丈夫か」


体が冷えてしまったのか、軽くクシャミをしてしまった。



斎藤「そろそろ部屋に戻れ。アンタに風邪を引かせては皆に何を言われるか分からんからな」

『はい…そうします』



そして私は部屋に戻り、今日の出来事を忘れようとしながら、暖かな布団の中で眠りに就くのだったーーー。







第三話、了
次の章へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ