現世の心

□第七話
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池田屋の件から翌日。

大広間

*斎藤視点*



土方「…そいつは本当か、斎藤」

斎藤「まだ確信はありませんが、恐らく…」


昨夜、鈴風が戦った男について、俺は副長に報告をした。


土方「その氷室という男は鈴風の事を知っていて、その上母親の事まで知っていた…」

原田「偶然にしちゃあ、出来すぎだろ。そいつは長州の奴だったのか?」

斎藤「いや…そこまでは分からぬ。鈴風なら聞いてると思うが…」


鈴風はあれから目を覚まさないままだ。

今、源さんと雪村が彼女の介抱をしているが…


永倉「しかし、その氷室っつー奴が言ってた、"傷"ってのはなんなんだろうな」


不意に新八が切り出す。



あの時、氷室が言っていた言葉…



ーーその目の傷は消えていないようだなーー



恐らく鈴風が痛いと押さえていた"右目"の事を指しているのだろう。

しかしその目を見ようした時、彼女は見せたくないと固く拒んだ。


原田「さぁ…けどその"傷"に関してはそいつが絡んでいる事は間違いねぇだろうな」

平助「けどよ、瑠樹は未来から来たんだろ?
そんなあいつをこの時代の人間が知ってるなんておかしくねぇか?」


……………………




確かに。



何故あの男は彼女の事を知っていたのだろうか?


彼女は初めて俺たちと会った時、気がついたら京の町中に倒れていたと言った。

屯所に留まった後も外に出した事がないから、何処かで氷室と接触していたというのも考えにくい。

一体どうやって…



山南「…何にせよ、その氷室という男には十分注意した方が良さそうですね。
理由は分かりませんが、奴は鈴風君を狙っているようですからね」

土方「ああ…今後は鈴風の行動にも注意しておかなきゃなんねぇな。悪いが斎藤、頼めるか」

斎藤「…承知しました」

原田「それにしても、総司と平助を倒した奴らといい…あんな強者がなんだってあんな所にいたんだろうな」


氷室と接触していた同時刻、総司と平助は二階で別の浪士二人と戦っていた。

だがその二人も桁違いの強さで、総司たちは命に別状はないものの、起き上がれないほどの相当な重傷を負わされた。


平助「俺も知らねーけど、次はぜってー負けねぇ!」

沖田「うん、僕も同感」


その浪士二人は長州の者ではないと言っていたそう。

だがあの夜、池田屋は長州以外は全て人払いされていた。
何故かは分からんが、なんらかの目的で潜入していた他藩の密偵なのかも知れない。

どちらにせよ、その二人も氷室同様、今後は注意した方が良さそうだ…



スッ……


その時広間の襖が開く。


土方「源さん。どうだ鈴風の様子は?」

井上「まだ眠っているよ。大した怪我もないから、目が覚めればもう大丈夫だ」

永倉「そうか!そいつは良かったぜ」


鈴風の無事に皆が安堵する。

せっかく隊に入ったのに、初日に死なれては元も子もないし、目覚めも悪い。


井上「今も雪村君が付いてくれているし、これで一先ずは安心だ」

原田「そうだな。今日はもうこれでお開きにしようぜ」



一同がそれに賛成し、俺たちはそれぞれの持ち場へ解散することにしたのだった。
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