現世の心

□第一話
2ページ/6ページ





「待て、小僧!」

『!?』


後ろから突然聞こえる男の声に振り向く。

すると向こうの奥の角から四つの人影が現れた。



『!……』


私は咄嗟に路地裏に隠れ込み、そっと様子を伺う。


どうやら三人の浪士らしき男達が、一人の人物を追いかけているようだった。





しばらくすると、浪士達はその人物を見失い、キョロキョロと見回す。


「くそ、何処へ行きやがった!」

「まだ近くにいるはずだ。探せ!」


『………………』






私は浪士の服装をじっと見る。





袴姿に脇差の刀……




『(…やっぱり……時代劇の撮影…とかではなさそう…)』


季節外れの寒さといい、況してや周りに撮影道具が全くないのだ。






これが現実なら……本当に江戸時代へ………







そんなこと考えていると、後ろから殺気を感じた。


『!!』


振り向くとそこには




「イヒ…イヒヒヒヒヒ…」


赤く目を光らせる、白い髪の男がこちらを見下ろしていた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ