現世の心
□第一話
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「待て、小僧!」
『!?』
後ろから突然聞こえる男の声に振り向く。
すると向こうの奥の角から四つの人影が現れた。
『!……』
私は咄嗟に路地裏に隠れ込み、そっと様子を伺う。
どうやら三人の浪士らしき男達が、一人の人物を追いかけているようだった。
しばらくすると、浪士達はその人物を見失い、キョロキョロと見回す。
「くそ、何処へ行きやがった!」
「まだ近くにいるはずだ。探せ!」
『………………』
私は浪士の服装をじっと見る。
袴姿に脇差の刀……
『(…やっぱり……時代劇の撮影…とかではなさそう…)』
季節外れの寒さといい、況してや周りに撮影道具が全くないのだ。
これが現実なら……本当に江戸時代へ………
そんなこと考えていると、後ろから殺気を感じた。
『!!』
振り向くとそこには
「イヒ…イヒヒヒヒヒ…」
赤く目を光らせる、白い髪の男がこちらを見下ろしていた。