黒猫ひぃSS
□ひぃとごしゅじん(高+銀×猫土)
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ざりざりとする地面の感触を草履の下に感じながら歩く高杉は珍しく割りと機嫌がよかった。
賭場で散々に勝った帰りだからである。
とりあえず買い込んだ食糧を片手に道を行けば、途中汚らしいやせた猫に出会った。
普段なら気にもしない、だが最近拾ってきた猫のせいで、猫を見るとなんとなく気にかかるのだ。
視線が合えば一瞬警戒して見せたその猫に手に持った紙袋の中から、適当に食料を出して差し出せば、よって来て喰らいつく。
汚い毛並をざらりとなでて、立ち上がる。
さてと歩みを進め帰路に着く。
今は旧友…といっていいのかはさだかでは無いが、まあそんなやつのところに身を寄せている。
からら、と戸を引けば、気配をかぎつけてやってきたのは、俺が拾った黒猫。
拾ってきたときには弱弱しく、でもつかみあげれば、弱っているなりに鋭い眼光でにらみ上げてきたその猫…首が絞まるのに小さくもらした吐息が、ひぃと聞こえたから、そう名づけた。
そう、「ひぃ」と。
「たかすぎーーぃ!おかえりぃ!」
とたた、とかけてくる、くるくるとした瞳と、なつっこい笑顔
初日のあの、警戒心を全開にした鋭い目が気に入ってさらってきたというのに…これだ。
「おみやげは?ご飯は?ひぃ、おなかすいた」
正直…たまにうっとうしい。
「うるせぇな…いまやるから待ってろ。」
しっしっと手ではらえばぷーと頬を膨らませて、…ぴたりと止まった。
「たかすぎ……」
「…あん?」
さっきとはまったく異なる声のトーン。
不思議に思って振り返ればきりっとなみだ目がにらみあげてくる。
うるせぇといったくらいで、こいつが泣くなんてありえない。
「どうした…?」
「たかすぎ…うわき…した」
「…はぁ?」
思いっきり間の抜けた声で高杉が返せば、小さいなりにとげとげした歯をがちがちとかみ合わせつつうらみがましい目を向けてくる。