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□ウマノリ
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今日は土方が非番のため、山崎と二人での見回りに、沖田はふてくされ気味だった。
つまらない見回りも土方と二人ならばそんなに嫌でもないのに。

「っち、つまんねーやぁ」
「はいはい、すみませんです」

なにが…とは言わなかったものの山崎にはそれだけで通じたようだった。
「なー山崎ィもう、けぇろうぜィ…」

「なに言ってんですか、出てきたばっかり…いや、帰りましょう。俺も用事があるんでした。」
「あん?なんでぇいきなり?」

「いや、俺も疲れました。」
ふーん、と相槌をうちかけて、山崎の肩越しに見慣れた人影…土方さんだっ!
やっぱり引き合っちまう運命なんでさぁ!俺達はっ!!
山崎の野郎、たまの副長様の休みを俺に邪魔されまいと気をまわして、帰ろうなんて言い出したわけだ。

土方さん…っと呼ぼうとして、片手をあげて…固まる

その沖田の凍りつく顔を横から山崎が青ざめつつ見やる。

土方の隣には…万屋、坂田銀時がたっていた。
あまつさえその手に持ったソフトクリームを土方に食べさせたりしている。
土方は断っているようだったが、口にべちょっと付けられて、仕方無しに口の周りを舐めとる。

沖田の目にはじゃれあっているようにしか見えない。

「隊長、落ち着いてください…隊長は今制服きてるんですよ、向こうは私服なわけで、今抜刀するのは大分やばい警官にしか見え…」
「山崎…今話し掛けんな…みんな殺してくれって聞こえらぁ…」

怒気をはらんだ沖田の声にぴたりと山崎が沈黙する。
沖田の表情はその声に反比例して優しげに笑みの形を作っていた。
「大丈夫ですぜ…割と冷静でさぁ…」
そう、自分相手に敬語で言う時点で大分冷静さには欠けているだろうと山崎は思ったが、まだ胴体と首がつながった状態でいたいものだと口つぐんだ。

それでも平静を装ってなのか、ゆったりとした足取りで二人の方へと歩んでいく。
沖田が足を進める度、
人が、

道を開けた……

ひっ…と息をつまらせる者すらちらほら見受けられる。
山崎には沖田の背中しか見えないが、それで沖田がどんな様相で二人へと近づいていくのかということは、嫌というほど知れた。

「副長っっ!!!逃げてくださいっ!!」
大声で叫ぶ。沖田の背中がピクリと揺れるのを目の端にとらえてから、山崎は逆へと走り出した。
ごめんなさい副長っ!!これで俺精一杯ですっっ!!

その声に土方が振り返って瞬時、押し殺した怒気を開放した沖田はすでに間合いをつめつつあって、沖田の姿を認めて、土方がこの状況を沖田がどう解釈するかを理解するまでに、沖田はもう後数歩のところまでさし迫って、そこでぴたりと足を止めた。
「総…っ悟…」
「おや、沖田君じゃん。」
「どうも旦那、いい日和ですねぃ…」
「んーほんとになぁ、こーゆー日のソフトはマジウマ。」
「俺はどっちかって言うとシャーベット派でさぁ。」
のほほんとした会話、それでも沖田の土方に対する指すような気配は相変わらずで、ただ一人凍てついた空気にさらされる土方がそこにいた。
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