SS

□招かざる来訪者
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必ず来るだろうと―――


思っていた、見付かってしまったのだから。



だからむしろ、遅かったなとさえその時に思った。




この辺はあまり治安の良い場所じゃあ無い
それは確かで、だけれどそんなに厳重に施錠して、防犯対策…なんてまねしなきゃあならないほど、別に貴重品もありゃしない。

この身一つ守るだけなら木刀一本あればいい。
最近ではうら若き乙女…と自称する少女と犬を飼ってはいるが、うら若き…はともかく乙女とは程遠い怪力娘も自分の身を守るくらいの力量は持っているし、それくらいなら俺でも守ってやれると…そう思っていた。


ただ、それは並の相手なら…いや、並以上でも護って見せるけれど…
今回は危険だと判断せざるを得なくて、神楽は新八の所にあずけて、定春もそれについていった。
久しぶりに一人っきりになって…寒々しいと感じる…

あの祭りの夜から三日めだった。

夜風と共に気配が滑りこんで来たのは―――






戸が開かれて、室内の空気が僅かに変わる。
布団に身を横たえたまま薄く目を開く。

銀時が身を起こしたタイミングで音も無く戸がひかれた。
立て付けの悪いそれは何時もなら滑りの悪いこすれる音をたてなければ開かないのに。

動じる事はなかった。
来ると…
必ず来ると…確信していたから。
ただそれでも心臓の奥がどくりとする、招かざる客ではあるものの、覚悟も心の準備も出来ていての来客だというのに…

身体はどうもそうはいかないらしい。


「…だめだろ…。人様のうちに勝手にあがりこんじゃあよ…。チャイムくれぇ鳴らせ。」
闇の中に鮮烈な赤…、その顔は影になって見えない…でも知っている人影…

それに寝ぼけたような眼で万年寝癖のついた頭の寝癖をそれでも直しつつ、そう話かければ小さく笑うのだけは聞き取れた。

つっ…と影は前へと歩み出る。
手のすぐ届く所に木刀のあるのを確認しつつその影が近付いてくるのを見やった。
窓から青白く入りこむ月明かりの注ぐそこにまで歩んできて、その表情が見て取れた。



「わりぃな…勝手にあがらせて貰ったぜ…」

「あんまり歓迎じゃないけど、茶ぁくれぇいれてやろうか?」
「いらねぇよ」

薄く笑う高杉に軽口をたたいて即座に一蹴される。
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