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□交錯球環
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しっくりと肌に馴染む京の空気、かって知ったる道、しばし滞在する宿を決めた高杉は換えの包帯やら消毒液やらを手にさげて宿へと戻ろうと夕暮れの道を歩いていた。

やたら赤々と射し込む夕陽にわずかに目を細め高杉はふと視線を下に落した。

視界の端に向こうから歳の頃なら3、4歳くらいの女の子が、帰りを急いでいるのか危なっかしい足取りでかけてくる。

なんとも危なげなもつれるような足運びは、危惧した通りの結末で高杉に応えてくれた。

びたんっと高杉の目の前に女の子がすっころんで潰れた
弾みで手に握りしめていたらしいガラス玉がいくらか散らばる。
砂利の中に、夕陽を反射してガラス玉は色とりどりにつやりと輝いた

無言で見下ろせば、ゆっくりと顔をあげたその子供は今にも泣き出しそうな顔と、それを証明するかのように泣きわめくための準備に入っていた。
高杉の姿を移した瞳がみるみるうちに濡れていく

ヒィィィっとつまった息を飲み込む音が口腔からもれて、目に溜まった涙が大粒の雫になり落ちる。

それは散らばったガラス玉にも似て───

そして次いでくる大音響の泣き声に粉々に粉砕された。
「びゃぁぁぁ〜ぁぁぁんっうわぁぁあっ」
「っ………!!」

泣き出した子供に高杉はくっきりと眉間にしわを寄せ、その顔をしかめた。
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