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□□square□‥‥2[多角的渦]
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「先生、どこ向かってるんですか…?」


振り返りもしない銀八の背中に、土方はおずおずと声をかけた。
銀八の向かう方は学校とは方向が違う。
生徒指導室へ行くと言われてファミレスを出たのだから、疑問に思うのも当然だった。

土方の問いかけを背に、それでも足をとめる事は無い銀八の隣にまで足を速めて進み、顔を覗く。
「なぁ…先生ごめんってば…」
「……」

少し拗ねたような、どこか甘えたような声に銀八はその少年をちらりと横目に見やった。

「先生…」
「…本当に悪いと思ってんのか…?」
「思ってるよ…」

「……」
「なぁ…どこ行くんだ?」
「俺ん家。」

「……、そ、ですか」

本当は方角的に目的地を予測できていたのであろう少年はそれだけ呟いて後は口をつぐんだ。

銀八のアパートは学校からさほど遠くない。
二人が出てきたファミレスからはさらに近く、歩いて15分ほどでアパートは見えてきた。
三階建ての白い壁、築は古そうだが管理がいいのかそれほど痛んだ印象のない建物だ。
ただしエレベーターはないから三階にある銀八の部屋まで上がるのには、荷物があるときには少しばかり面倒に思うこともあった。
そして、内装は外観よりも良い。一度リフォームが入ってるみたいだといつだか銀八から聞かされている。

帰宅と同時、フローリングに荷物を投げる銀八に続いて中へと足を踏み入れた土方は申し訳程度のお邪魔しますと共に靴を脱ぎ、床を踏む。
終始無言の銀八に気まずそうに視線を向ければ、その視線は奥へ入れと促してくるのみだ。

テレビの前に置かれたソファの側、床へと腰を下ろしてそのソファの座席へと背を預ける。
どさりとソファに銀八が腰を下ろすのを下から見上げた。
やはり機嫌は悪い、いや、良いわけがないのだが。

「先生…まだ怒ってますか…?」
「…当たり前だろ、すっぽかされてんだし」
「…それは、先生が…」

「俺が何?」
「…っ」

上から髪を鷲づかみにされて言葉を詰める。
そのまま床へと押さえ込まれて、必然的に銀八を見上げる形に床に縫いとめられた。

「俺がなんだって言うんだ?」
「先生が…っ」
問いかけに応えようとして開いた唇は相手の唇によって塞がれた。
口内へと押し込まれる舌、ぬるりと侵入して中を犯す。
歯列の裏側へと回り込む舌先は柔口蓋をくすぐってなぞりあげる、苦しげにもがく土方の舌を吸い上げて甘噛みして、その舌の裏筋を舌先に嬲る。
うめきを漏らす土方の苦しそうな息遣いに唇を浮かせて、ゆっくりとその濡れた唇をなぞれば、少年の瞳は緩く開かれてとろりと銀八を見上げてきた。

「…先っ…生…。」
「なんですっぽかしたりするかな…。俺を怒らせるのが楽しい?お仕置きして欲しいの?」
「違います!…っだって、先生…ヤるつもりだったんだろ…っ!?」

整わぬ息の間に言葉を吐き出して溶けていた瞳は銀八を軽く睨みつける。

「…俺、あんなとこでシたくねぇ…」
「……」
「誰かに見られるかも知れないし…気味悪いし…」

語尾はだんだん力を失って声は小さくなる。

ややふてくされたような土方が視線を逃がすのを見下ろして、銀八はその髪を撫でた。



。。。。。。。




放課後、銀八は土方を理科室へと呼び出していたのである。
くるように言った時から土方は嫌だと言っていたが、本当にすっぽかしてくれるとは思わなかった。
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