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□安息の居場所
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気に病む必要もない。

「ああ…」

実際土方も、人を殺してしまった、という意味合いで言ったわけではないのだろうコトを山崎は理解している。
重要参考人を殺してしまった、と端的に事実を口にしただけだ。
だから、どっちにしろはかせられないなら殺しても問題はないでしょう、と淡白にかえして。

土方にとって人を切ることは、さんざんやってきたことで、いまさらテロリストを切り伏せた事に罪悪感など…ない、そう思わなくてはこんな仕事やってられない。
きれい事を並べてるだけではなにも前になどすすまないのだから。

ただ、血をあびると、血液が沸き立つ。
ああ、自分はやはりそういう人間なのだと、そう思い知る。

血に飢えているつもりはないが……

押さえられない衝動に血が沸く…
止まらない。
刃を交える瞬間のこの感覚……

殺す手前で止めねばならなかったのに致命傷をおわせてしまった。
とめられなかった。
コントロールが効かない、ソレが土方の落胆の原因で。


口にしないけれど、土方がその感情を隠そうともしないで自分には見せてくれる。

嬉しい…山崎のむねにそんな感情がふと湧く


「ちょっと失礼しますね」
かたく絞った手ぬぐいで土方の頬にはねた返り血をふき取る。
これはいつものこと、ただ大人しく身支度を整えさせてくれる
スカーフにも血がはねていたからそれも外した

「替えの上着です。」

「…ん、」
後ろにまわって上着を脱がせて、新しい上着を背にあて拡げると腕を後に伸ばしてくるから、袖を通してやる。
もう一度前に回ってスカーフを首にかけた
身長差でやりづらそうにしていると少し頭を下げてくれた。


気がついたのは、その時、スカーフのはずされたシャツは前にかがむと襟元が少し下がって、きれいに浮き上がった鎖骨にそって…


赤い鬱血…


ああ、きっと、沖田隊長がつけたんだろうな…なんて思ってたら、手が止まってた。
「山崎…?」

ぼぅっとしてる俺を不思議に思ったのか、副長が覗き込んでくる。
ふと見上げれば、どーかしたのか…という顔…いつもよりすこし幼くみえる
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