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□所有欲と自己主張
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「いや、あの…総悟、浮気とか…しないし、マジ信じろって」
「そうですかぃ、わかりやした、やめときやす」
いやにあっさりと引いて沖田がソレをしまう。

一歩、沖田が足を踏み出した。
ずざっと土方が後ずさる。
じろっと沖田が土方を見やった。

「……やらねぇって、いったでしょ?」
「…、ああ、きいたよ…」
「じゃあなんで逃げるんでぇ?」
「……逃げてねぇし…」

また一歩沖田がふみだして、同じだけ土方がひいた。

「……逃げてるじゃねぇかい」
「………。」
「どーーーして逃げるんです?」

一歩。
下がる。

「土方さん?」
「……。」

じわりと迫力を滲ませつつにじり寄ってくる。
「土方さん、俺を信じてくれねぇんで?」
「……ッ」
「土・方・さんっ?!!」

眉をピクリとつりあげて、にこやかに沖田がどすをきかせた。

「〜〜〜っっ!!信用なんて出来るかぁぁぁぁっっ!!」
猛ダッシュをかけて戸に向かう、幸い戸を背にしているのは土方で、思い切り戸を蹴りあけて飛び出した。

「逃げ足だきゃあ速ぇえね。」
ちっと舌打ちして手の中でもてあそんでいたソレを放りあげるとパシッと取って一人ごちる。

「ばれたか」……と。
学習能力あるんじゃあねぇかい。
でも……逃がしません。

たんっと床を蹴って駆け出す。
土方の逃げ足がいくら速くても…獲物をかるときの沖田にかなうわけないのである。


後から気配が迫る。
無言で迫り来る恐怖。
完全に獲物を狩るものの目だった。

「キタァァァぁぁあ!!」
鬼気迫る悲鳴をあげてひた走る土方の前に希望の光。
前を歩いている近藤の後姿!!

「近っっ藤ぉぉぉぉぉおさぁぁぁああんっっ!!!」
「……?」
かるく此方を振り返る近藤の背にがしっと腕と脚を絡めてしがみつく。

「うおっっ!?」
反動でくるっと180度向き直った近藤の前には息一つ切らさない沖田がいつも通りの無表情で立っていた。
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