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□□square□‥‥序章[多角的渦]
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ふてくされたような高杉は窓側の奥の席に、ソレを塞ぐようにして土方が通路側へと腰を下ろす。
その高杉に対面する席に近藤、お縄になった高杉をつれて三人で入った和食レストラン、高杉とは対照的に土方の機嫌は良く、運ばれてきたカツ丼にマヨネーズを盛り付けている。
ソレを嫌そうに横目に見やる高杉を近藤教諭は真剣な眼差しで見つめた。
「高杉、聞いてるのか?お前このままじゃ卒業できなくなるんだぞ?」
「別に構わねぇよ…」
「構わない事あるか!先生はなぁ、クラス皆で一緒に卒業させてやりたいんだよ!」
その熱苦しい願貌にさらに熱血の文字が瞳に煌くの高杉はうんざりと見やった。
「そーだよ高杉、近藤先生がこんなに一生懸命になってくれるんだからさ、授業ぐらいでたらいいだろ」
隣で相槌を打つ土方が口を出してくるのをぎろっと睨みつけてやるも一向に臆すところ無く箸に絡んだマヨネーズを舐め取る土方に忌々しく舌打ちしてふいっと視線を外す。
「うるせーよ、てめぇら二人ペアのキャッチかなんかか?」
「そんな言い方ねぇだろ!俺は…」
「余計なお世話なんだよ!土方は黙ってろっ」
「コラ、喧嘩はやめなさい」
「うんうんそーだよねー」

言い争いに発展しそうになる土方と高杉をなだめる近藤の声にダブった声、三人は座ったままについたテーブルの脇に立つその人物を見上げた。
「全くもってその通りだよ、うん」
どさりと空いている近藤の隣に腰を下ろしてメニューを開いたその男は、3Z担任、生物教師の銀八であった。
「銀八先生、あんた何してるんですか…」

「おねぇさん桃とマンゴーのパフェ一つー」

ひらひらとウェイトレスに手を振って注文する銀八、そのいきなりの登場に近藤が突っ込むもさらりと無視を決め込んだ。
「いやいや、パフェじゃなくて。」

高杉にとって銀八は2Zのときの担任教師であり、教師嫌いの彼の唯一学校内で心を許す男でもある。
何か他の教師とは違う…、いや、著しく違う銀八に高杉は惹かれていた。

「…銀八」
「高杉、久しぶりだねぇ」
「…あぁ」
にこりと笑みを見せてくれるのに微かに口元を笑わせる。
銀八は浮かべた笑みをそのまま高杉の隣の土方へと移す。

「……さっきぶりだねぇ…土方君…?」
「……は、ハイ」
微笑とは対照的に冷ややかさをかもし出す声音、ずり落ちた眼鏡をつっと持ち上げて銀八の視線は土方へと刺さる。

先ほどまで近藤に同調ながらマヨ丼をつつきつつ高杉と言い合いをしていた土方はどこへやら、すっかりと大人しくなった土方は箸を握ったまま俯いてそれでも上目に銀八の方へと情けない視線を恐々ながら向けていた。
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