Housekeeper

□家政婦琥珀
1ページ/4ページ

街の中の一際目立つ豪邸に一本の電話が入る。
「はい、わかりました。」
一人が出て適当に相槌を打ってから電話を切る。
電話を取ったのはこの邸宅の第六王子の如月汐(きさらぎせき)だった。
「またかぁ。」
汐は溜息を吐く。先程の電話は家政婦会社からの電話で新しい家政婦が来るという内容だった。如月家の両親は多忙で海外にいるため家事全般は自分達でやることになっていたがいつしか誰もやらなくなった。このままではいけないと思い家政婦を雇ったが兄弟の嫌がらせに耐えきれなくなり泣きながら出ていくということがあった。しかもその嫌がらせは家政婦が来る度に行われて何度も変わった。こうなってくれば汐でなくともため息が出る。
「誰からだった?」
「あ、蒼兄様…。アレです。」
「アレか。」
第二王子の蒼(そう)に“アレ"で通じるのを見る限り今までに沢山の家政婦を追い返したのが分かる。
「今度はどれくらいもつだろうな。」
蒼は困ったように笑う。
汐や蒼はしっかりしているが兄弟の中には埃が溜まろうと虫が這おうと構わないという者がいる。それは流石に迷惑極まりない。とはいえ、財閥家の家を掃除するなど疲れる。だから家政婦を雇ったのだが気に入らないと言う理由で追っ払うのが日常風景だ。
「今まで一年以上もちましたか?」
「もたなかったけど。家政婦会社にいつも迷惑をかけるな。」
「本当ですよ。どうにかなりませんか?」
「俺と汐が働いてもどうにもならないから仕方ない。俺は絵が書ければ構わない。」
「そうですか。今回もコンクールが近いのですか?」
蒼は絵画を嗜み、数々のコンクールで金賞を受賞しており絵画界の中ではなかなか名が知られている。
「いや、コンクールは無いが常に描いてないと腕が落ちる。さて、俺は部屋に戻る。家政婦が来たら知らせてくれ。」
「え、僕ですか?」
「汐以外には頼めない。他はいきなり生卵を投げつけそうだしな。」
「分かりました。」
面倒だったが汐は従うしかない。蒼の言う通り他の兄弟は何をするか分からないのだ。来たばかりの家政婦を生卵を投げつけて出迎えるのは避けたい。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ