Housekeeper

□仕事ぶり
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琥珀は住み込みの家政婦として雇われていた為、一つだけ使われていない部屋を明け渡した。とはいってもタンスとベットと簡単な机、椅子の簡素で質素な部屋だった。が、掃除でもしていたのか幾分か綺麗だった。
「あの、ここが君の部屋だから・・・。」
琥珀に好印象を持った汐は進んで琥珀に屋敷の説明をした。
「ありがとうございます。結構掃除が大変そうかと思いましたがこの部屋は綺麗ですね。」
「そうかな?まぁ、流石に女性だから埃があったら嫌じゃないかな?」
というのもこの部屋は定期的に汐が掃除しているのだった。
「いえ、今まで働いていた場所では廃屋みたいなところで寝泊まりを強いられたこともあるのでとてもありがたいです。ここはちゃんと綺麗ですし、家具も揃っていて屋根もついています。」
(屋根もついてなかったんだ・・・。)
廃屋を強いられるとしても屋根がなかったら最早人は生活出来ないのではないのかと汐は思ったがケロリと答える琥珀の顔を見る限りそんなに苦ではなかったのかもしれない。
「あぁ、廃屋を与えられてもお風呂や食事は屋敷の方で許可が出たので実際は寝る場所といった扱いでしたし、雨の日はカプセルホテルなどの宿泊施設も利用しました。」
汐は貴族だが、カプセルホテルも知っているし、廃屋での生活だと屋根もないのだから雨風筒抜けで台風や雨の日なんてとてもじゃないが女性が平気で眠れる環境ではないことも理解できる。
「あ、汐王子はカプセルホテルはご存知ですか?」
「え?あぁうん。知ってる。あのね、ハクちゃん。」
「はい、何でしょうか。」
いきなり名前を呼ばれて少し驚いていた琥珀だったが表情には出さずに聞き返した。
「それ、やめてくれって言ったらやめる?」
「それとは?」
「丁寧語というか業務用語かな。あとその汐王子っていう呼び方も。」
汐はだんだん声が小さくなるのを自分でも感じていたが、こんなにも若い娘が業務用語で話すのも嫌だった、そして何よりも先程の琥珀の偉そうな態度と乱暴な口調(多分あれが素なのだろう)の印象が強烈過ぎて今の丁寧語は違和感を感じるのだった。
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