long〜Timeless
□気づけばそこに
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あの玩具宣言…
あれによって、私は所謂失恋というものをした。
あの発言は、折原臨也が私を一人の『人間』ではなく、実験用のモルモットと同じように見ているということを証明したわけだが
不思議と悲しみという感情は生まれてこなかった。
むしろ、あの言葉に感謝さえしている。
あの言葉が、あの臨也さんの目が、私の浮かれた気分を粉砕したのだ。
うざったいほどに、粉々に。
私は浮かれていたのだ
大好きな小説の舞台に突然トリップし、大好きなキャラクターと同棲という展開。
そのキャラというのは、(性格に難はあれど)あのイケメン折原臨也さん。
さらに、臨也さんと毎晩同じベッドで寝るときた。
この状況で浮かれないわけが無い。
どんな形であれ、彼の言葉によって救われた。
きっと、彼の信者たちはこうやって彼の言葉に呑み込まれていくのか…
―――まぁ、私は信者になる気は毛頭ないが
玩具という立ち位置に甘んじて暮らすつもりもないが…。
そればっかりは、彼の心の持ちようによるものだから、私がどうにかできるものでもない…。
あ、それから、
彼への恋心がどうなったのか、それは自分でもよくわならない。
モルモット宣言、もとい玩具宣言によって、私の乙女チックロマンスハートは浮かれ気分と共に粉砕された。
彼の側にいることによって発生する動悸、胸の痛み等の乙女的症状はどちらかといえば沈静化へ向かっている気がしなくもない。
ただ単に慣れただけかもしれないが。
しかし、
『彼の側にいたい』
という感情は相変わらず存在していて(この気持ちがなかったら、あのウザさの中で生活するのはまず不可能だと思う)
実のところ、彼に対する自分自身の感情がわからなかったりする。
まぁ、浮かれすぎず、頑張るとしよう。
ちなみに、今日は私立来良学園の入学式だ。
まぁ、入学式と言っても私の家政婦的仕事はそのままあるわけで、
「臨也さん、朝ごはんできましたけど」
いつも通りパソコンと向き合っている臨也さんに声をかけた。
いったい彼はいつ起きていつ寝ているのだろうか。
ここ数日一緒に寝起きを共にしているが、彼が寝ている所を見た試しがない。
「君ってさ、地味に料理上手いよね」
「……地味に、は余計です」