long〜Timeless
□幻のままで
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「未来、ダラーズって知ってる?」
臨也さんはパソコンを弄りながら、私に尋ねた。
―――いつもより楽しそうだし、チャットでもやっているのだろうか。
「まぁ、はい」
「どのくらい知ってるの?ダラーズについて」
臨也さんはパソコンから目を逸らし、私の方へすっと視線を向けた。
―――私を試してるの?
どうしよう…。
ここれで詳しく知っているなんていったら、臨也さんの駒にされかねない。
それは御免だ。
「……小説の中で名前だけ出たので、あんまり知らないですけど。
カラーギャングっていうことは知ってます」
「……嘘、ついたね」
「!?」
若干細められた臨也さんの目が私を見据えていた。
―――なんで?
なんで、嘘だって…
「未来ってあんまり思ってることが表情に出ないけどさ、最近わかるようになってきたんだよねー。君が何考えてるかをさ。」
「ここまで来るのに苦労したよ」などとおちゃらけたように言う臨也さん。
「なんで…嘘だってわかったんですか」
「君も俺の愛すべき人間の一人だからね。そういう目で見ていれば、自然とわかるようになってくるさ。
まぁ、強いて言うなら、微妙な…ほんとに微妙な君の表情の動きが捉えられるようになったからかな」
「そう…ですか」
―――『未来ちゃんって何考えてるかわかんないから嫌い』
小さい頃友達の女の子に言われた言葉。
それを今、ふと思い出した。
誰かに感情を読み取ってもらえるのは、案外わるいことではないのかもしれない。
…それが臨也さんの場合、悪い方向に行く可能性が大なのだが。
「嬉しそうだね」
「はい」
私は自然と微笑んでいて。
臨也さんは驚いたような顔をして、「嫌がるかと思った」と呟いた。
「で、嘘はついたらだめだよ?」
うっ…。
話を戻された…。
「どこまで話せばいいんですか?」
「その口ぶりだと、だいぶ深いところまで知ってるみたいだね。」
その通りだ。
ダラーズの創始者が誰で、
そして、これからダラーズがどこへ向かっていくのか。
そんなことまで知っている私は、なんと答えたらいいのだろうか。
このことを彼に言ってしまったら、物語が進む先が変わってしまうのだろうか。
きっと変わるだろう…。
私が黙って心の中で葛藤していると、「言いたくない?」と臨也さんが聞いてきて、
「……わかりません。でも、言わない方がいいような気がします。」
これは月並の答えなのだろうか。
この答えでは、きっと臨也さんを満足させることはできないだろう。
―――――つまらないと、やっぱり飽きられちゃうんだろうな
「……そう。
そんな辛そうな顔しないでよ」
うそ。
私、そんな顔してた…?
「言ったでしょ?俺にはわかるって」
驚いて彼の方に目を向ければ、ひどく優しそうな表情をしていて、
彼のこんなにも人間らしい、いつもの作り物の笑みとは違う表情を初めて見た。
「まぁ、まだまだ君の表情を完全に読むには時間が必要みたいだけどね」
臨也さんは楽しそうに言った。
「………楽しみにしてますよ」