過去と今と

□第3話
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『まったく……』

「そういえば、星那ちゃんって何で男バレに?
女バレだってあるのに……」


扉を見ながらため息をつくと、菅原がこちらに来た。


『あー……まぁ、その内わかるっスよ
なんていうか…話すタイミング?的なのがあるんで』

「そっか……」


菅野は微笑むと練習の準備をしに行ってしまった。


『……タイミングなんて嘘っスけどね…』


呆れられたくない≠スだそれだけの理由なのだが、それを口にすることはなかった。


『皆さーん!私も手伝うっスよー!!』


星那は笑顔で走って行った。



♦♢


「お疲れした!!」

「したーっ!!」


練習が終わり、空には星が瞬いていた。


「「勝負して勝ったら入れて下さい!!!」
――とか言って来そうじゃないスか?」

「あり得る!頭冷やしてチョコっと反省の色でも見せれば良いだけなんだけどな」

「アイツらもそこまで単細胞じゃないだろ
―――でも、仮にそう来るとしたら影山が自分の個人技で何とかしようとするんだろうな」

「「……」」

「もしも影山が自分個人の力だけで勝てるって思ってるとしたら――…
影山は中学から成長してないって事だな」

『…………』

「中学でそうだった様にある程度までは個人技で通用しても、更に上へは行けない」

「「……」」

『…………あのっ「「キャプテン!!」」

「「!?」」

「何だっ誰だっ」


星那が何かを言おうとすると突如遮られた。


「…あれっ、お前らっ」


田中が扉を開けるとそこには日向と影山が立っていた。


「ずっとそこに居たのかよ!?」

「(ミスすんなよっ)」
「(おめーだよ)」


小声でそう話すと、キッと見上げてきた。


「勝負させて下さい!」
「おれ達対先輩達とで!!」

「!!ブホッ、マジでかっ」

「……」

『……来ると思ってたっスよ…』


星那は笑顔で呟いた。


「「(せーのっ)」」

「「ちゃんと協力して戦えるって証明します!!!」」

「ビバ単細胞!!」

「せーの≠チて聞こえたんだけど」

「……」

「でも俺こういう奴ら嫌いじゃないっスよ!」

「……」


田中、菅原とは違く、大地は厳しい顔をして腕を組む。


「負けたら?」

「うっ」
「どんなペナルティでも受けます」

「…………ふーん…
―――丁度良いや。お前らの他に数人1年が入る予定なんだ
そいつらと3対3で試合やってもらおうか」

「!」

「毎年新入部員が入ってすぐ雰囲気見る為にやってる試合だ」

「えっ、でも3対3…ですか?
おれ達側のもう一人は……」

「田中。お前、当日日向達の方入ってくれ」

「えェ!?俺スか!!?」

「こういう奴ら嫌いじゃないって言ったろ」

「関わるのは面倒臭いです!!」

「「…………」」

「問題児を牛耳れんのは田中くらいだと思ったんだけどな……」

『わぁ!田中さんそんなにスゴイんスか!?
スゴイっスね!憧れるっス!』

「っしょぉぉがねぇなああああ!!
やってやるよ!嬉しいか!?オイ!!」


田中は嬉しそうな顔をして日向の背中を叩く。


「よし
―――で、お前らが負けた時だけど
少なくとも俺達3年が居る間、影山にセッターはやらせない
もちろん、顧問の了承も得た上でな」

「……は?」

「単なるペナルティじゃないぞ
個人技で勝負挑んで負ける自己中な奴が司令塔じゃチームが勝てないからな」

「――!」

「…どうした?別に入部を認めないって言ってる訳じゃない」

「―――……」

「お前なら他のポジションだって余裕だろ?」

「俺は!!セッターです!!!」


影山が声を荒らげて言った。


「――勝てばいいだろ
自分一人の力で勝てると思ったから来たんだろ」

「―――……」

「――試合は土曜の午前
……いいな」


大地はそう言うと中に入って行った。


『…………』


♦♢


『田中さん田中さん』

「どうした?」


星那は窓際に立っている田中に走り寄った。


『明日の朝練って何時からなんスか?』


星那が聞いた言葉の意味を田中は読み取り、咳払いをした。


「ん゙ん゙っん゙っほんっ」

「「??」」


外で二人が気付く。


「明日も朝練は7時からですよねーっ!?」

「え、うん。そうだけど…イキナリなんだよ」

「エッ、いやっあっきょっ『教頭のヅラって無事だったんスかね!?』
「!?オイその話ヤメロ!!」

「「明日…」」

「朝5時。」
「遅刻すんなよ!」
「オメーだよ」


「『…………』」

『……(田中さん、明日朝5時っス)』

「(5時な!)」


星那と田中は拳を突き合わせた。


「何してんだお前ら……」

『同志ってやつっスよ!』

「……」


ドヤ顔で言う星那に菅原は首を振った。
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