Stage @
□迷子の迷子の仔猫ちゃん
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始めての夕飯は、それはそれは賑やかだった。
《ぐぅぅぅ────。》
永「遅えぇよ!!俺の!!この腹の高鳴りをどうしてくれるんだっ。」
平「ただの、新ぱっつあんの腹の虫だろ〜?」
留衣が知ってる食事のシーンが蘇る。
近「留衣君!空いてる席に座ってくれ!」
辺りを見回して原田の隣が空いていたのでそこに座る留衣。
(・・・・総司君の目の前だぁぁぁぁ!ん?・・・・・・・・ちょっと失敗したかも・・・・目の前・・・・)
好きな人に食べる姿を見られるのは恥ずかしいもので、自分が空いてる所に座ったものの、少し後悔する留衣だった。
「『いただきます』」と全員が箸を進めて行けば、恒例の【あれ】が始まった。
永「魚は頂いたぜ〜!」
平「なんでいつも俺から取るんだよ!」
永「それは、俺の身体が平助より、でかいからだ!!わははははっ!」
平「それを言うなら育ち盛りの俺は、もっと食べないとなぁ〜!」
永倉の魚を取ろうとするが、平助が掴むその前に永倉は魚を丸ごと一匹、飲み込んでしまう。
平「あ〜!ずりいよ!て、魚・・・・丸ごとかよ。骨は出せよ・・・・骨は・・・・。」
無惨にも残るのは魚の尻尾だけである。
そして永倉は残りの尾を平助に見せると真剣な顔を浮かべ口を開く。
永「・・・・いるか?」
平「いらねぇよ・・・」
(わぁ────///// リアル突撃晩御飯だぁ・・・・w)
留衣は そんな光景に見入っていた。
近「 騒がしくてすまないなぁ・・・」
申し訳なさそうに、近藤が頭を掻きながら謝るが留衣は柔らかな笑みを浮かべた。
留衣『全然〜ッッッ!すごい楽しいですよ!』
留衣がそんな言葉を口にすれば近藤は安堵の表情を浮かべ会話を続けた。
近「そうか!そうか!なら安心した!たくさん食べてくれ。わははははっ」
近藤は豪快に笑い、それにつられて留衣もクスッと笑う・・・・。
こんなに馴染んでいいいのか・・・と心の中で思いながらも、彼等と食べる初めての食事は本当に楽しかった。
笑いが収まり、有る程度 食事が進んで、もうお開き・・・・そんな雰囲気の時 土方が口を開いた。
土「 留衣は、仕事が決まるまで俺の小姓にする。」
「「「はあぁぁぁ???」」」
幹部達は一斉に奇声をあげた。
留衣『ええぇぇぇぇ────っ!!』
だが、当の本人の留衣が一番ビックリしていた。
土「 近藤さん、山南さん、俺で決めたことだ。」
永「 まぁ、三人で決めたことならな・・・・」
そんな土方の言葉を聞けば、幹部達も納得してるようだった。
ある一人を除いては・・・・。
土「 留衣に小姓しろ!って言っても何も出来ねえ!ただの世間知らずだ!おまけに緊張感が全くねえ! まずは幹部の奴らに色々教わりながらゆっくり覚えていけばいい!」
( 貶されてる?励まされてる?)
そんな気分になりながらも、土方に感謝する留衣は 眉を下げる。
土方なりの優しさだったのであろう。
自分の小姓でいれば、隊士にもさほど怪しまれず、有る程度の生活力も身に付く。
何しろ留衣は、未来から来た為に、この時代の事が何もできないのだ。
仕事すら決まらないのは 目に見えていて、自分の帰り方すらも分かっていない。
土方の下に居れば断然動きやすい。そんな配慮だったのだと思う。
(あたしが来てからずっと・・・・あたしの待遇を考えてくれてたんだもんね。)
昼間の土方との時間が留衣の脳内をよぎる。
土方自身も、何故 こんな昨日 今日来た留衣に、肩入れしてしまうのかが自分でもハッキリとは 分かってはいないが、縁があり事情があり この屯所に迷い込んできたんだと思っていた。
土方も土方で 迷子の捨て猫の主人になったような気持ちだったのかもしれない。
留衣と土方は、互いにそんな気分になるのだった。