小説.

□狡い、
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「ごめんな妙。」

「...はい。」




聞いてしまった。彼女の声と、ある男の声。

「運悪いなオイ...」






【 狡い、】 







個人的な解釈でいくと。
これはおそらく告白の返事のシーンってとこか。


俺は担任に課題を出しに来た。
職員室に行くと資料室んとこだって言ってたから、行ってみたらこのザマだ。
いつもの俺ならこんな空気でも迷わず担任に話しかけるが。


その相手が。
駄目なのだ。

「姐さんが..ねぇ。」

独りぽつり、と呟いた。
少し廊下に響いた。
きっとあの2人には聞こえてない。
2人は2人の世界で。俺は独りで。





銀八と姐さんは仲が良かった。俺が見るとき見るときいつも2人で居て。
近藤さんが、
「先生とお妙さんって仲良いよなぁ。」
とほざいてたから、そうなんだろう、という予想。

だけどまさか、好きだったなんて。
知らなかった。
いや、
知っていた。
見てたから。
テストを返されたりするとき、名前を呼ばれると嬉しそうにするとこ。
歩いてるとき、すれ違うと顔が紅くなるとこ。
先生を見つけると急いで駆けていくとこ。
全部。
全部、
だからこそ、友達以上の関係にはなれなかった。
知ってたから、それ以上の感情を忘れようとしたのに。
毎日おはようと言ってくれたり、ばいばいと言ってくれたり、
その彼女の行動が、忘れさせてくれない。




「じゃあ妙。また明日、な。」

「...はい。さよなら。」

「おう。」


戻ってくる。こっちに。
よし、普通にすれ違おう。
普通を装う。普通を。

「、あ、姐さん。」

「..沖田くん。」

「先生見かけなかったですかぃ?」

「あぁ、先生なら、」

と、言いかけた彼女の瞳から、つ-、と雫が落ちた。

「、ね、姐さ、」

「なんでもないの、ごめんなさい。だから気にしないで、ね、」

笑って泣いてる、矛盾したその表情。

「泣くなら泣いていいでさ。俺は何も言わねぇ、聞かねぇ、」

抱締めてあげた。迷子の子供をあやすように。

「....っふ..。」

その瞬間、彼女は、ぷつりと糸が切れたように、ポロポロと涙を流して、泣いた。
ぽんぽん、と頭を触ってあげると、抵抗もせず、ただただ涙を流していた。



俺はずっと、彼女を逃がさないように、腕に閉じ込めておいた。



好き、

end..?




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