*国金物語
□どちらも嘘はついてない
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「できた?」
「おぅ、サンキュー」
「帰りに何か奢れよ」
「わかった」
英語のプリントを折りたたみながら、
「これで明日は大丈夫だ」
と安心した声でカバンにしまい込んでいる。
テスト前や課題が出ると必ず金田一は
教科書やノートを見せて、わからない問題を聞いてくる。
この時間は嫌いじゃない。
二人きりになる口実を探さなくてもいいし、
俺の説明を「わかりやすい」と誉めてくれるし、
何より頼られるのは純粋に嬉しい。
「国見はすげーな」
「別に普通だろ」
俺から言わせれば
思った事を素直に言えるお前の方がよっぽどすげーよ。
「だって俺が出来ない事を国見は全部出来るじゃん」
「そんな事ねーよ」
その分、お前は俺の出来ない事を全部出来ている事がどうしてわからないんだろう。
「俺の事よく見ててくれてるし」
「えっ?」
「俺の苦手な科目とか問題とか俺よりわかってんなーと思って。
勉強教えてもらう時とかさ、
俺がわかんない所を言う前に「ここだろ?」って言ってくるじゃん」
「……お前が毎回同じ所を聞いてくるからだよ」
そういう意味か。
ちょっと焦った 。
「それにさー、
俺が何か忘れたり探したりしてると国見の方が気付くの早いし」
そういう所は気付くのに、
理由を考えないから気付かないんだろうな。
「俺、国見がいないとダメかもなー」
笑いながら言うんじゃねーよ。
「もういいから早く着替えろ。
先輩たち来るぞ」
それ以上言われたら部活どころじゃなくなってしまう。
「あ、ヤベ!せっかく松川さんから鍵借りてきたのに」
慌ただしくロッカーを開け、上着を脱いでシャツのボタンを外していく。
さっきの会話のせいで一つ一つの仕草に目を奪われてしまう。
「国見、俺さ」
ボタンを全部外したシャツを脱ぎかけた状態で
名前を呼ばれて目が合って…
「…何だよ」
「さっきから思ってたんだけど」
あ、見てたのがバレた?