*及岩物語

□ズルいと思う?
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「及川さーん」


「がんばってー」


「及川せんぱーい」



あの子も俺を見てる。
隣りの子も俺を見てる。



あのグループの子たちはよくお菓子をくれる。


大丈夫、今日もみんな俺を見てるね。





ってあの子は何か違うな。

体育館入り口のドアに隠れるように上半身しか見えない状態で誰かの動きを見つめている。



俺が見ていても目が合わない。


あの子の視線の先は………



「岩泉さん、さっきのフォーメーションなんですけど」


「おう、どうした」





久しぶりだなぁ。
俺と同じ人を見ている子。


見る目があるなぁ。



でも、




「岩ちゃん、トイレ」


「さっさと行ってこい」



隠れるように見ていたつもりかもしれないけど



「こんにちは」


「えっ!あ、こ、こんにちは」


「初めて見る子だなぁとさっきから思ってたんだ。

よかったらもっと中入って見て欲しいな」


「え、でも」


「ここじゃ寒いでしょ。風邪引いたら俺心配しちゃうよ」


「///あ、はい、すみません」




ごめんね。
岩ちゃんだけは誰にも渡す気ないから。



今日もみんな俺だけ見ててよ。

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