*国金物語

□きっかけを壊すのもくれるのも
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先月から借りている漫画をまだ返していない。

昨日コンビニで塩キャラメルを奢ってもらった。

明日は部活終わりに買い物に付き合ってもらう約束をしている。


そして今日は「寝坊する自信があるから起こして」とお願いした。


これだけあればどれか一つでも理由になるだろう。


カバンのファスナーを僅かに開けてその存在を確認する。


『この漫画ずっと借りててごめん』
『昨日は塩キャラメル奢ってくれたし』
『明日買い物付き合ってもらうから』
『今日起こしてくれてありがと』

口実もたくさん用意した。
どれを選んでも違和感なく渡せる。

しかも今年は土曜日だし金田一に渡せるのは俺だけだ。



大丈夫、大丈夫、大丈夫………


『起きたか?じゃあいつもの所でな』


今朝のメッセージをもう一度読んで、
携帯をポケットにしまう。

いつもの待ち合わせ場所が見えて、
俺を見つけた金田一が大きく手を振った。


まだ距離があるのに「おはよー!」と笑いかける金田一に
頭の中で繰り返していたセリフが吹き飛んでしまいそうだ。



大丈夫、大丈夫、大丈夫……




カバンのファスナーをしっかり閉めてゆっくりと深呼吸をしながら
意を決して金田一の元へ向かった。
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