*国金物語

□気付くまでもう少し
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月曜日の放課後。

部活が休みだから早く帰れるのに
掃除当番の金田一はまだ戻ってこない。


「最近さ、バイト先の先輩とどんな?」

「もう全然ダメ。妹みたいに思われてるよー」


クラスの女子が2つ前の席で帰り支度をしながら
『バイト先の先輩』について大して悩んでなさそうに話している。
本当に女子ってそういう話好きだよな。


「何で?妹みたい、って言われたの?」

「言われてないけどー
『あの3番テーブルの子すごい可愛い』とか
『彼氏なんてすぐ出来るって』とか
お兄ちゃんみたいな事言うんだよ」

「あーそれは微妙だねー」


金田一遅いな…

うるさくて寝れねーし。
何もしないで待ってんのって疲れる。


「でしょ?
でも『俺の大学くればいいじゃん』とか期待しちゃう事も言うの!
がんばっていいのか諦めた方がいいのかわかんなくなる」


「そういうさ、恋愛対象として好きか
それ以外の感情で好きか知りたい時に効果的な言葉があるんだって」


「何それ?心理テスト?」


……………


「転校するとか、卒業後は地元を出るとか『ここからいなくなる』みたいな事を言って
『会いに行くよ』とか自分から動いてくれるような答えだったら恋愛対象で
『たまには遊びに来なよ』とか自分から動かない答えだったら脈ナシなんだって」


……………………本当かよ。


「それ本当?」

「ニュアンスによるから絶対じゃないだろうけどね。

だってさ、その先輩がバイト辞めるとか大学卒業したら東京行くとか言ったらどうする?
『たまには帰ってきて下さいね』とか悠長な事言える?」

「絶対ヤダ!私も東京行く!」

「そう思うでしょ?
会えなくても平気なのが恋愛対象外の好きで
会えないと辛いのが恋愛対象の好きだ、ってお姉ちゃん言ってたもん」

「なるほどね。明日バイトだから言ってみようかな…」



…………くだらねー。


「ごめん国見!遅くなった。
帰ろうぜ」


「おぅ」



本当にくだらねーな。

言葉一つでこいつの気持ちがわかったら苦労しねーよ。
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