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□早く気付いて
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「恭弥ー」



また来た。


「入る前にノックしてといつも言ってるよね?」


「あ、そうだった。悪い。
早く恭弥に会いたくてさー」


明らかに悪びれていない態度にため息をつき日誌を閉じる。



突然現れた鞭を使うこの外人はリングがどうの守護者がどうのとわけのわからない事を言う。


そんな事に興味はないし、この先も知りたくなる事はないだろう。


けれど、時間が経つにつれて嫌でも知ってしまう事もあって…



この目の前にいる外人はイタリア人らしい。
いつも一緒にいる部下は髭の人だけど
他にも多数の部下がいるらしい。



部下だけでなく、小動物や赤ん坊や絶えず誰かが側にいる。



何が楽しいのかいつもヘラヘラしているし、
大して親しくもない人間にまで手を差し伸べる。


そんな人が



「なぁ、恭弥!今夜飯行かねー?」


「恭弥、手の傷どうした!?
消毒したか?いつどこで何でだ!」


「恭弥、って漢字はどう書くんだ?」


と、うるさいくらいにまとわりつく。



「あなた、いつも周りに誰かがいるんだからいちいち僕に構わないで」


「………恭弥がいい」



そんなの嘘。


あなたはムキになっているだけだよ。

どうせ今まで、誰とでもすぐに仲良くなって
人間関係で困った事なんてないんだろう?


それが今回は思うようにならなくてムキになっているだけ。


だから僕はあなたの言う事なんて聞かない。



みんなと一緒にしないで。
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