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□SA♪change off〜2人だけの秘密〜
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change off      〜2人だけの秘密〜

最近はめったに開くことのないファンレター。

ふと手にしたそれは細かな凹凸が独特で何とも気になる。

大野は土曜に撮影される自身の番組の楽屋内でハサミで手紙の端を切った。

開封すれば目に鮮やかな
青と紫のビーズで刺繍を施した、魚がすぐそこにいた。

全身を喜びが駆け巡る。
淡い未開の海に潜む魚を
釣り上げたような興奮が、くすぐったい。

耳を肩で触れる仕草に気づいた相葉は大野をからかう。

相『翔ぉちゃ〜んみて
見て』

楽屋に帰ってきた櫻井を手振りを交え、近くに寄せる。

櫻井が両手の側面をくっつけ、大野の目の前にだし、それをここに乗せてと合図をした。

大野はスローペースでそれを櫻井の掌に置く。

櫻井の手元にあったそれを相葉はすかさず取り上げた。

『まだ俺見てねぇ』
と相葉を叱ると
『知ってるよ』と言い返してきた。

櫻井は相葉の元に渡ったそれを取り合う。

大野は笑顔を凛々しい表情にすり替え

『俺のために2人とも
喧嘩は止めて』

と優しく仲裁に入った。

二つ結びの似合う某女性グループの一員のような声で。

相葉櫻井はふひゃひゃと愉快に声を上げ笑った。

『(止めたのは)リーダーのためだからだよ
と相葉。

取り合ってるとき、


手元の青と紫で縫われた魚が朝日のように光り出し、
直視したふたりは、
はっきりとしない世界に一瞬投げ捨てられた。

脳に光の残像が残り
赤やら緑やらの星が
宙を舞う。

『相葉は?』
『翔ちゃんは?』

相葉と櫻井はこの時何が起きたか理解する余裕がなかった。



『俺がいるんだけど!?』
ふたりの不安そうな声に大野は何度も櫻井と相葉を往復してみたが、

違和感だけが心に残る。

櫻井からは
明るく親しみやすい志村動物園で耳にする声。

相葉からは
ハキハキとした
ニュースゼロの声。

大野は瞬時に理解すると、顔の血の気が引くのを感じた。

ふたりが安全に仕事を続けるのを見守っていかなきゃならないグループのリーダーとして
ここで心を折っている場合ではない。

普段はオフにした脳は
自然と解除された。

松本と二宮を合わせ、
5人緊急嵐会を開くことにした。
必然的に。

相葉からいじられ感が減ったり、目つきが少しクールなのも、
櫻井の興奮すると声が枯れたりウィンクできないのも、

何より大切な個性が失って凹む
このふたり。
松本は事情をなかなか受け入れず、相葉櫻井はひたすらに説明をした。

『ふたりでリーダーの魚の刺繍の手紙を持っただけなんだよ!?』

櫻井からキレ気味の声がどうも証拠でしかなく、

松本は椅子に背中をあずけ、がくりとうなだれた。

二宮はその3人を避けるように大野の耳元へ近づき、
『大野さんは大丈夫だったみたいですよね?』

と確認をしてきた。

こくりと頷く大野を見た二宮は、大野に手紙の中やその文面を見るように手配した。

大野は二宮の耳をそっと掴んで『2時間ほどでおわるよ』の文字を読んだ。

手紙の主に文句をつけたいが、そうしてる暇などなかった。

スタッフさんは帰してしまったし、櫻井相葉のふたりは近くにいなくてはならない。

ただ、誰より心配であろう松本は明日のドラマの撮影があった。

この緊急嵐会に参加させるのすら申し訳なかった。

相葉櫻井にとっても、
二宮は自分だけの番組のために今日は帰さなくてはならない。

困り果てたふたりを救ったのは大野だった。

大野は二宮を帰すために約束をした。

タクシー代、今度ふたりきりで遊ぶこと、戻り次第連絡は一斉送信すると…。

タクシーのそばまで着いていくことにした。
でないと二宮は『一緒にいる』と言うとふまえ、
大野の直感がそうさせた。

松本は潤んだ瞳を堪えながら櫻井相葉に

『大丈夫だから。戻るから。絶対にもとの嵐で俺ら頑張っていくんだから。』

とふたりを両手に抱え、

櫻井と相葉の肩に頭を乗せて熱く励ましてくれた。
しまいには相葉は『まつじゅーん』と泣き出してしまった。

松本は肩が冷たくなってたことも帰る途中まで気付かなかった。

櫻井は声には出さなかったが泣いていたと後に二宮に話している。
大野が楽屋に戻る頃には
松本は既にいなくて、ソワーに腰をかけ、申告な面持ちで対面してる櫻井相葉の姿があった。

櫻井は目元が赤く、相葉は唇を紡いでいた。

大野はそれが反対の姿だと気づくのは時間がだいぶ過ぎた頃だった。

相『しょーちゃん。俺に話しかけてるみたいだけどさ、聞いて。リーダーも』

大櫻『うん。』

相『俺ん家おいでよ。』
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