小さな恋の蕾(夢)
□Prologue
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――狂気。
――悲鳴。
――声にもならない断末魔が、荒野一帯に響き渡る。
もう、何人切ったかさえも分からない。
数え切れないほどの敵を殺した。
数え切れないほどの味方が死んだ。
私の体を染め上げるこの血は、一体誰のものだろう?
敵の返り血か、あるいは味方の血飛沫か……。
どちらにしても、血生臭いこの匂いは鼻に付く。
「……さっさと終わらせよう」
こんな茶番を、長く続ける意味などない。
刀身を伝う紅い雫を振り払い、鬼桜を鞘に納める。
人々から“天鬼”(てんき)と謳われる私自身の、本来の力を発揮するため。
この下らない戦という名の争いを、一刻も早く終わらせるため。
戦はもう、終盤だ。
乱雑に転がる味方の屍を踏み越えて、最後の戦いに身を投じた。
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