小さな恋の蕾(夢)
□6の蕾
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それから私はタシギちゃんに連れられて、一つの空き部屋に入った。
「それじゃぁ、何かありましたら部屋の前にいる海兵に声をかけてくださいね」
親切にもそんなことを言ってくれるタシギちゃんはホントにいい人だと思う。
それはもう心配なくらいに。
だってほら、なんかこの子って悪徳商法とか詐欺とか簡単に引っかかりそうじゃん?
まぁ、あの葉巻男がそばについてるなら大丈夫だろうとは思うけど……。
一人でいるときとか絶対やばいと思うよ……。
そのまま部屋を出ていく彼女を見送って、私は部屋の中を一通り見渡した。
「あるのは、使い古しのソファーと机と椅子、あとベッドとクローゼットが一つか。ま、短時間生活するには十分かな」
食事はほかの誰かが持って来てくれるみたいだし……。
必要最低限は部屋から出てもいいって言ってたから、トイレとかの心配もないしね。
「……あー、なんかもう疲れたぁ〜」
私は勢いに任せてベッドにダイブした。
お世辞にもフカフカとは言い難い感触だけど、それでも今日は十分眠れそうだ。
まぁ、全く知らない場所で、あんまり深い眠りには入れないだろうけど……。
でも、今日はいろんなことがありすぎた。
さっきまではいつも通り、沖田隊長や副長、銀時とかと一緒にいたりしてたのに……、今は全くの別世界だもんなぁ〜。
「…………はぁ〜。少し、寝よう」
浅くてもいい。眠りにつこう。
起きたらまた、いつも通りの日常が待ってるんじゃないかという、限りなく可能性の低い希望を抱いて、私はゆっくりと意識を手放した。