小さな恋の蕾(夢)
□8の蕾
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Not名前side
マストが倒れた衝撃で、土煙のようなものが立ち込める。
海軍G−5中将、白猟のスモーカーは両の拳をきつく握り締めた。
「……クソッ」
「スモーカーさん……」
その後ろに控えるタシギもまた、やりきれない思いを抱き目を閉じる。
煙が徐々に晴れていく。
その時、一人の海兵が声を挙げた。
「あ、あれは!!」
その声は、スモーカーとタシギの耳にも届いた。
その海兵はある一点を指で示している。
二人が視線を滑らせると、そこには思いもよらない光景があった。
「なっ!」
「あなたは!!」
二人は同時に目を瞠った。
いや、二人だけではない。
ほかの海兵も、海賊も、その場にいる全員が、その光景に唖然とした。
「あーぁ、助けるつもりなんてなかったのに……」
どこからどう見ても普通の人間と変わらない体躯の女が一人で、大きな海賊船の倒れかかった巨大なメインマストを平然と、片手で支えるその姿に。
「これ、一つ貸しね」
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