mein *テニスの王子様-長編-*

□やんちゃな子程寂しがり。[俺の気持ちが爆破した。]
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(※季人視点)


…何やってんだよ…俺…。
カッコ悪すぎだろ…。
天音が見てる前であんな…。
彼奴は余裕な顔してたのに…俺は…。
そう…俺は一度も天音にカッコいいとこなんて見せた事がない。
天音はあんな事ばっかやってっけど、本当はすげぇ甘えたで寂しがり…。
それは俺だけが知っている天音の本性。
俺は、それだけで満足だった。
…満足だったはずなのに…今頃になって天音の全てを俺だけのものにしたくなった。
そう思い始めたのは天音が中学校入りたての時だった。
まだ中学一年生なのに男子テニス部のマネージャーになったと俺に告げた。
俺は「天音のやりたい事をすりゃあいいんじゃないか?」なんてカッコ付けて言ったけど…それが天音を”束縛”と言う鎖で縛り付けたキッカケだった。
中一の夏休み、合宿でマネージャーの仕事があるからと合宿に参加した天音に俺は胸騒ぎがした。
合宿初日の朝、俺の放った独占欲で満ちた言葉に天音は驚いた表情を浮かべた。
そりゃそうだ。
今まで冷たく接していた兄貴の態度が急に変わったんだからな。

「合宿…本当に行くのか…?」
「うん!楽しみだなぁ…」
「…いつ、帰ってくんだ?」
そう問いかけると不思議と苛立ちが込み上げてきた。

「うーん…2週間くらい…かな?」

何とも可愛らしく首を傾ける天音を思わず抱き締めてしまった。

「何かあったら直ぐ電話しろよ?」
「うん!季人は案外心配性なんだなぁ…」

そんな事を言う天音は緩く俺の背中に手を回した。
きっとお前にとって今の俺はただの”心配性な兄貴”としか認識されてないんだろうな…。
今すぐにでもその薄く汚れを知らない唇を奪ってやりたい。
泣かれたっていい。
嫌がられたっていい。
俺は…お前にどんなに嫌われたって、誰よりも愛し続けたい。
誰になんと言われようと…。

…一年前はこんな事ばかり考えていた。
俺だって”年頃の男”だ。
夏になると必ず天音は露出の高い服を着る。
…言わなくたって分かると思っていたが、あそこまで天然だと俺も襲う気が無くなる。
と、言うか純粋な天音を襲おうとした俺自身が情けなくなる。

確かに俺たちは兄妹だ。
だけど、血が繋がっている訳じゃない。
表上では兄妹。
裏上では男女。
…そう…俺たちの事を知らない奴の前でなら”何をしたって”構わない筈。

俺は決めた。
今から俺は、天音を狂おしくも愛す事を…。
逃がしなんてさせない…。
必ず俺だけのものにしてやる。

心でそう決心した後玄関のドアノブに手を掛けていつも通りのセリフを吐いた。

「ただいま。」

やんちゃな子程寂しがり。[俺の気持ちが爆破した。]完

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