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□零話
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僕が彼女に初めて出会った時、彼女はまだ制服を身に纏っていた。


久々に母校へ挨拶をしに行くと、僕が所属していた部活の顧問と誰かが話しをしていた。
その子は見るからに校則違反の茶髪に太もも丸見えの短いスカートを履いていた。
何やら顧問から説教を受けている様子。
その忙しそうな光景に顧問への挨拶は後にしようとした時、顧問が顔をあげた。
厳つい顔付きから柔和な笑顔へと変わる。

「おぉ!!久し振りじゃないか!!元気だったか?」


片手をあげ、こちらへ話し掛けてくる。
その声で説教を受けていた彼女もこちらを振り返った。
キツい目付き。
耳朶にはキラリとピアスが輝いていた。

「あー…、お久し振りです。お陰様で元気でやらせてもらってます」
「いつ来たんだ?」
「ついさっきです」


なんて有りがちなやり取りをしている間も視界に入る女の子。
怠そうに窓の外を見ている。

「それで?今日はどうした?」
「就職が決まったので挨拶に来ました。ついでに部活も覗いて行こうかなーっと……」
「おぉ!!それは良かった!!おめでとう!!部活は好きに見てってくれ。なんなら後輩の指導もしていって良いぞ」
「いや、それは良いです」


テンションの高い顧問に若干引きつつも苦笑いをする。
ふと、そこで顧問が彼女に向き直った。


「こいつは新入部員でな、色々教えてやってくれよ」
「えっ?」
「じゃ、俺は今から会議だから!!頼んだぞ!!」


顧問はそう言うだけ言って足早に去っていった。
 

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