小牧幹久
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午後の格闘技訓練。
「笠原…あたし達じゃあんたの相手は無理よ……」
あっちの方で誰かがそう言っているのが聞こえた。
『(そうやって弱音を吐くからできるものも
できなくなるんだよ)』
水季は心の中で呟いた。
「そっか……あっ、そこの女子!あたしと組まない?」
一瞬、誰のことを言っているのかわからなかった。
けれど、声を発した張本人━笠原さん━が
私の肩を叩いた。
そこの女子=私、と理解できた。
『えっ!?私なんかでよければ…』
「いいのいいの!それにあたしが組んだことない女子だし!」
『はぁ………』
水季は曖昧な返事をした。
「あたしは笠原郁!…今更だけどよろしくね?」
『私は桜井水季です。よろしくおねがいします。』
「えーっと……あたしと歳が近そうだしタメで
いよ?実はあたし敬語が二ガテなんだ……」
『はい…じゃなくて、うん、わかった!
じゃあ…組もっか!(教官が怖いし;)』
「りょーかいっ!手加減はしないよ!」
手加減はしない、と言った郁だが……
勝ったのは水季だった。
『(……昔、教えてもらったからなー)』
水季がこう思っていることを誰も知らないのであった。
その後他の女子と組んでいたけど、体力が
なくなってきて投げられる回数が多くなってきた。
『(まぁ受け身の練習になるからいっか…)』
そんな呑気なことを考えながらも
投げられ続けている水季であった。