流星の神

□ノラ猫
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「野良………」


「そんな体で
あんな不安定な神器 使うなんて
どうかしてるよ。


あんなコ、捨てちゃえばいいのに」


夜トは黙って、
水をペットボトルの中に入れながら
話を聞いていた。



「あたしがいるよ」


そう言って野良に抱きしめられたのにも
反応せずに。




すると、



『野良………!?』



「、っあむ!?」


「………あら、あむちゃん。

久しぶりね」




なんで夜ト抱きしめられてるの。



なんで何も言わないの。




今の夜トの神器は雪音でしょ?






そう考えていると、勝手に体が動いた。
今、水月も火月もいないが

夜トと野良を
引き剥がすことだけは出来るだろう、と。








『今すぐ離れなさい………ッ』




「………っ!

怒ると本当怖いんだから。
やめてよ、そんな目向けるの」


最初は、ビクッとしていたが
またいつもの怪しい笑みを浮かべた。





「あむ………。



大丈夫だ、帰るぞ」


『え、ちょっと………


夜ト………………!?』



「夜ト、いつでも呼んで?」







手を振っている野良をその場に置いて
あむの腕を取り歩き始めた。











もう少しで、あむの社だ。


そこまで2人は何も言わずに
歩いていた。


すると、夜トが立ち止まり口を開けた。


「…………サンキューな」


『………………………』


あむは夜トにお礼を言われたが
今はちっとも嬉しくない。


ムスッとしているあむを見て
夜トは少し不安そうだ。


「あむ………?」


『………夜ト、なんで

なんで抵抗しなかったの』



抵抗、というのは
抱きしめられた ことにだ。


「あ、いや…ぼーっとしてて………」


『あたしが、いなかったら………』


あむがいなかったら、
どうしていた?


そう聞こうと思ったが、
あたしは夜トの幼馴染でしかない。


抵抗しなかったの?、
なんて言える立場じゃないのに。





すると夜トは、


「あむ…」

『きゃッ!

ちょちょちょちょっと、夜ト…!?』


なぜ このタイミングで抱きしめるのだ。




夜トは、あむの肩に
顔を埋めた。


『夜ト………くるし...』


トントン、と背中を
叩いても夜トはやめなかった。



夜トに抱きしめられることは
全然嫌じゃないし、
とても良い匂いがするし、


あむも知らぬ間に
抱きしめ返していたのだ。



「あむ、首には触んなよ」

『え、もしかして………』


「いいから…」



そう言うとあむの背中に
回していた両手を片手だけ腰に回した夜ト。


『………や…ッ、夜ト…!』


あむの体がビクッと動いた。


耳元であむの声がする、
いつもより少し高い声に夜トの心は
穏やかではなかった。


(やっべぇ…
このまま押し倒しそうだ…っ)



夜トは頭にある考えを
振り払おうとするが、
どうしても無理なのだ。


2人っきりの夜で。
抱きしめあっていて。
しかも相手は、長年想いを寄せるあむ。


時々、
あむの頬が夜トの肩に
擦り寄せられる。


『夜ト、顔赤い。

具合悪いよね、やっぱり…』


ヤスミのことを気にかけてくれているのだろう。

夜トは、あむが可愛くてしょうがない。


「っ、だ、大丈夫………!」





『夜ト………?』

「ん?」

『また、野良が来たら

あたしが助けに行くからね。
夜トのこと傷つけさせないからね』


「………!

あぁ、頼むよ」


夜トは腕に もっと力を入れた。


あむへの愛しさと、
心配かけている申し訳ない、という気持ちを込めて。
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