表
□Real feeling
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ふとため息をつく。
キッチンでおやつを食べながら、皿洗い中のサンジ君の後ろ姿を眺めていた。
実は私はサンジ君が好き。
後ろ姿も髪型も。
本当は男女構わず優しいことだって全部。
ずっと見てきたんだから、知ってるよ?
でも一度も、それを伝えたことはない。
そんな勇気はないから。
だってサンジ君が私のことを一人の女として見てくれているかなんて分からない。
女の人皆に優しいサンジ君が、私一人を好きになんてなるわけないよね…。
それでもやっぱり好きなんだ、私。
静かな部屋の中、水音だけがキッチンに響いていた。
じっと見つめていると、パッと目が合ってサンジ君は笑って見せた。
「どうしたの?ツバキちゃん」
ああ…もう、そんな顔されたら。
心臓がドキドキして、目を見られなくなる…。
「な、何でもないよ…?!」
サンジ君の表情一つ一つに、鼓動が押さえられないよ。
皿洗いを一旦やめて、サンジ君は私の隣に座って言う。
普段通り、女性と話す時のテンションで。
「もしかして惚れた?♡」
「なな、何言ってんのサンジ君…!!」
「だってツバキちゃん、俺のこと見てよく顔赤くするから。好きなっちゃった?♡」
私の顔を見て嬉しそうにニコニコして。
「や、やめてよサンジ君…!!全然違うし!!」
私はプイッとそっぽを向いて顔を見られないようにする。
つい、気持ちとは真逆の言葉を放ってしまう。
ちゃんと自分の気持ちが伝えられればよかったのに…。
そんなことがほぼ毎日続いて。
恋人になりたいって気持ちを、行動に移せないの。
怖いんだ…。
私が甲板でナミとお茶をしていた時のこと。
『いい加減に告白したら?』
最初は普通にファッションの話とか、男のちょっとした愚痴とか話していた。
でもナミは急に話を変えて、サンジ君の話を呆れ口調で言った。
『そんなこと言ったって…』
『まだ分かんないでしょう?あんた次第よ』
ナミの言ってることはいつも正しい。
でも。
『…やっぱり私、出来ない』
私はそう言い残して甲板から、こうしてキッチンに来て。
気分転換…と思いつつも、本当は逃げてるだけだってことは分かってる。
でも、今はこのままだとしても…。
彼を見ていられるなら…それでも…。