表
□狼男
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あの日、俺はツバキをフッた。
理由は“他に想い人がいる”と。
あいつは平気なフリしてたつもりみてェだが。
あれ以来、俺を避けるようになったことで、案の定傷ついてるのは見え見えだった。
俺は普段通り振る舞ってたし、これ以上のことは何も起こらないと思っていた。
そんな時、ツバキは一味を抜けた。
何であいつは船を降りたんだ?
俺を好きなんじゃねェのかよ。
いや、まあ…まとわりつかれなくなったのはいいけどよ。
別にいなくなる必要はねェだろ。
苛立ちが増す。
ツバキがいねェと静かだ。
あの鬱陶しい声を聞かなくなって清々する。
しかし、何でこんなにイライラすんだよ。
頭の中に浮かんだあいつの顔は。
見たくもねェ、笑顔だ。
…くそっ。
「…鬱陶しい」