□笑う悪魔の悪戯を
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そろそろお昼過ぎた頃だろうか。

図書館に混もって読書中の私には時間の感覚はない。


私達はとある島に来ていた。

ルフィ達が揃って島へ降りて買い出しをしていて、珍しくも船には私とサンジ君が残っている。

二人での船番は初めてだし、二人きりなのも初めてだ。

それが落ち着かなくて、こうして静かな図書館で読書に耽っていた。


…しかし、この本の内容ときたら。

読み進めていけばいく程に卑猥な表現の書かれている恋愛物の小説。

物語の主人公は私みたいな性格だし、相手の彼も何だかどことなくサンジ君みたいな口調。

一緒にいるはずじゃないのに何だか変な気分だ。


そんな風に考えていると、ゆっくりと部屋のドアが開いた。

「ツバキちゃん。ここにいたんだな」

顔を出したサンジ君はニコッと微笑む。

「また読書かい?」

「う、うん」

隣に座った彼の顔が近くて、本に視線を移す。

本のせいなのか変に意識してしまって、鼓動がドキドキとはやく鳴っている。


「へぇ…ツバキちゃん、こうゆうの好きなんだな」

突然の言葉に、私は慌てて本を閉じた。

覗き込まれて、一体どんな内容なのか少し知られてしまったようだ。

「べべっ別に!!これは!!た、たまたま!!」

自分でも分かるほど態度が急変したために、彼にエッチな子だと思われたかもしれない。

頬が熱くなるのを感じるし、変な汗が出る。


そんな私をよそに、サンジ君は何か思いついたように口角を上げたあと口を開いた。

「する?」

「…え?」

「しよっか」

その意味深な言葉をかける意地悪な表情に、私はたじろいだ。

「な、何を…?」

「何だと思う?」

戸惑っているうちに頬に手を添えられれば、心臓の音は大きくなるばかり。

近づく距離に我慢出来ず、ぎゅっと目を閉じると唇が触れた。


最初は優しく触れるだけ。

ただ今日はいつもと違う。

わざとらしく吸ったり、リップ音を立てるサンジ君。

「…ん……っ」

口内深くまで入り込んだ舌が絡み合い、呼吸は乱れ、自然と下半身が疼く。

「サ…ンジ、く…」


吐息を漏らす私を見て、サンジ君は笑い出した。

「なっ、何で笑うの…?!」

「もしかしてツバキちゃん、“エッチ”すると思っただろ?」

「…え?」


「俺が言ったのは、“キスしよっか”って意味だよ」


その言葉を聞いた途端、全身真っ赤に染まるくらいの羞恥心に包まれる。

「…ッ!!もう…!!意地悪…っ!!」

まさか自分が考えていたことと全然違ってたなんて…!!

こんなの私が本当にエッチみたいに思われちゃう…!!

今にも火が出そうな顔を隠すように両手で覆った。


「ごめんごめん」と謝りながらも、サンジ君は笑っている。

悔しくて背を向けると、彼は優しく抱き締めてくれた。

身体はすっぽりと収まって、腕からは彼の体温がよく伝わるのが分かる。


「可愛いな、ツバキちゃん」

こうして優しく抱き締めてくれるところも、もちろん意地悪なところも、私はやっぱり大好きなんだ。


 
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