□キライ、キライ、スキ。1
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第1話 溶ける


今日の夜は満月だ。
「――い…」
ガラス越しに見える済んだ夜空には、星たちが散りばめられている。
「…おい」
ソファーの上でうたた寝している中聞こえる声。
それはだんだんとはっきり聞こえ、揺れる体に私は目を開けた。
「こんなとこで寝んな、風邪引くぞ」
展望室の部屋を背景に、視界に入ってきたのはゾロだ。
「……なんだぁマリモかぁ」
「あ"ァ?」
「どーしたの…?」
「どうってお前…。不寝番、交代の時間だ」
「ん〜…動きたくない…」
「あのなぁ…」
呆れたようにため息をつき、ゾロはソファーに腰を掛けた。

「そもそも何杯飲んでんだよ」
「…数えてない」
「ったく、そーなる前にやめとけよ」
「だって…」
私は自棄に進むお酒を片手に取り、窓の外を眺める。
「…サンジ君が全然相手にしてくれないんだもん」
密かに想いを寄せる人。
優しくて、私のことをいつも助けてくれて、気づいたら好きになってた。
でもいくらアピールしても、彼は全然気づいてない。
サンジ君の優しさは、私だけに向けられるものじゃないから…。
「…」
まだ中身が入ってるジョッキに口をつける。
「あ、おい。もうやめとけ」
それをゾロは奪って、遠ざけるように床に置いた。
私は拗ねるように口を尖らせて、星空に視線を移した。
「そもそもあいつは女なら誰だって愛想振り撒くやつだろ。そう気にすんな」
「…」
だから余計に難しい。
ナミやロビンはスタイル抜群。それに比べて私は、胸はそれほど大きくないし、くびれがあるわけでもない。
「何で相手にしてくれないと思う?」
「さァな」
「ナミみたいに色気がないからダメなのかなぁ…」
「……」
何でこんなに上手くいかないんだろ…。
ただ好きなだけなのに。
ガラス窓から見える星空を眺めた。

「俺はそうは思わねェな」
ゾロは指先で私の顎を動かして、顔を近づける。
ぼーっとしていると唇が触れた。
「……」
「何だよ…、もっと驚くと思ったんだが」
「え……?」
「仕方ねェか。今は“酔っぱらい”だしな」
そしてゾロはまた唇を重ねる。
角度を変えながらの甘噛みに、次第に口が開く。
隙間から侵入してきた舌を絡ませた。

 
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