□キライ、キライ、スキ。2-2
1ページ/3ページ

 
第2話 混ざる 後編


――今夜も不寝番を順番に行っていた。
今は私の番。
少し欠け始めた月も綺麗だ。
展望室で一人窓の外を眺めていると、だんだー瞼が重くなってくる。
「おい」

急に低い声が聞こえて、私は視線を移した。
「またここで寝る気か?」
ソファーにドカッと座った男を見て、心臓がドキッとした。
そこにゾロがいるからだ。

「交代の時間…まだだよ…?」
「あァ、早めに来た」
ゾロはお酒のボトルを片手に口角を上げる。
その自然な笑顔に、心臓がトクンと揺れて目が合わせられなくなった。

変に意識しすぎなのか落ち着かない。
昨日ここでゾロとの曖昧な記憶が甦る。
思い出せない部分もあって、あんまり実感が湧かないけど…。
「何そわそわしてんだ」
「へ?!い、いや?別にっ…」
ボトルに口をつけて言う彼に、私は背を向けた。
心臓の振動が全身に響いてるように感じる。
気を紛らわすために外を眺めることにした。
相変わらず月の位置は、肉眼で見る限り一定の場所から動いてない。
雲だけが優雅に流れていた。

暫くすると、背後にいるはずの気配が動いた気がした。
視覚から感じられないときは、聴覚が異常に敏感になるものだ。
ボトルが床に付く音が聞こえたあと、身体が何かに包まれた。
筋肉質な腕の中にすっぽりと収まる自分。
「わっ…!バカ!!離れてよ…!!」
腕を剥がそうとしてもびくともしない。
「フッ…色気のねェ声…」
「わ、笑わないでよ…!!」

体重を預けるように肩に顎を乗せ、目を閉じるゾロ。
髪の毛が当たって首回りがくすぐったい。
「あんまり調子に乗ると訴えるから…!」
「へぇ、誰にだ?」
「サンジ君とか…」
「そりゃ結構だな」
背中に感じる温もり。
そのまま体温が溶け合っていきそう。

しかしよく見ると、ゾロの腕はすごい筋肉の塊だ。
力強くて、男らしさがあって。

ホントにこの腕に抱かれたのかな…、私…。
(…って!何考えてんの…!バカ!)

暫く動けずにいると、首筋に触れる柔らかい感触にハッとした。

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ