□カラフル
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夏の暑いとある日。

いつ頃からだろう…。
何となく頭痛がする。
この前雨の日に出かけたことはあったけど…。

頭がぼーっとして足取りは覚束ない。
とにかく休みたい一心で、女部屋に向かっていた。

フラフラしたまま甲板を歩いていると、曲がり角で大きな壁にぶつかった。

「痛たっ…」
「!…おいおい、前見て歩けよ…」

ぶつかった顔を手で抑えながら前を見ると、そこにいたのはゾロだった。

「…あ、ごめん…。気をつけるね」

重い足取りのまま歩こうとしたが、脚が縺れて、身体が地面の方に傾く。

「あ…!」
「危ねっ!」

そのまま倒れると思ったが、腹部をゴツゴツした感覚に掬い上げられた。

「大丈夫かよ…。立てねぇのか?」
「…うん」
「ならチョッパーんとこ行くぞ」

「ありがとう」と言うのと同時に、地面から足が宙に浮いて、抱き抱えられるような体勢になった。

これはお姫様抱っこだ。

「きゃっ…!ちょ!ゾ、ゾロ!?」
「この方が早ェだろ」
「だ、だからってこんな…!」

ゾロの顔が近い。
それに身体も密着している。
恥ずかしさのあまり、私は慌てふためくしかなかった。

「お、下ろして…!」
「暴れるな!落ちるだろ!それとも一人で真っ直ぐ歩けるのか?」
「……歩けません」
「だったら大人しくしてることだな」
「はい…」

これ以上は抵抗しても降ろしてはくれなさそうで、このまま渋々医務室まで向かうことにした。


医務室に着いたが誰もいない。
ベッドの上でやっと降ろしてもらえると、ゾロはこちらを見ながらゆっくり近づいてくる。

「な、何?」
「動くなよ」

ゾロは私の後頭部を抑えると、更に顔を近づけてきた。

「ちょっ…!?」

(キスされる…!?)

身動きが取れず、思わず目を瞑る。
暗闇の中、コツンと額に何か当たる感覚。

恐る恐る目を開けると、目の前にはあったのはゾロの顔だった。

「…やっぱり熱ィ。こりゃあ熱あるな」
「ゾ、ゾロ…!近いよっ…!」
「あぁ…、悪ィ」

ゆっくりと離れるゾロ。
私は前髪を直すように髪の毛を触って誤魔化した。

「熱が下がったら、展望室に来いよ。話がある。明日夜8時な」
「話って…?」

私が訊くと「それは明日な」とゾロは笑った。

「寝てろ。チョッパー呼んでくる」

そして理由も言わず、満足そうに医務室を出た。

(び、びっくりした……っ!)

私は布団で口を覆った。
何だか勘違いした自分が恥ずかしい。


チョッパーが来るまでの間、心臓の音が落ち着くまで布団を被っていた。

 
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