表
□虎の瞳
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私はとある島に来ていた。
独りになるには船から出るしかなかったのだ。
ゾロの顔を見る度に、彼の視線を奪う相手に対して、嫉妬で気が狂ってしまうのではないかと。
そんな自分が怖い。
だから麦わらの一味を抜けた。
そして私は独り、街を歩いている。
街の中は明るく賑わっていた。
他人の気も知らないで。
ふと、小さな酒場を見つける。
港からずっと歩いてきた私の脚は今や棒。
休もうか、それともこんな賑やかそうな所など避けようか。
店の前で悩んでいると。
「入らないのか?」
誰かに声をかけられ、こんな小さな女の子に話しかけるなんて怖い人かも知れない。
と、恐る恐る振り返って見たその人は。
黒い服に白い帽子───。
「…トラファルガー・ロー…」
前に会った時からは何ヵ月も日が経っていたから、顔を見るのも声すら久しぶりだ。
「お前がここにいるってことは、麦わらの一味もこの島に来てるのか?」
「ううん、来てないよ。私、船を降りたから…」
「一味を抜けたのか…?!」
「う、うん…」
すると、急にローが私の腕を掴んで店の中に連れ込んだ。
「ロー…?!」
「ちょっと来い」
カウンターに無理矢理座らされ。
「今一人だろ。少し付き合え」
注文したワインが来ると私に差し出した。
何かちょっと強引…。
「強引で悪かったな」
「えっ!?私声に出てた…!?」
「はっきり聞こえたぞ」
(うぅ…)
そんな他愛ない話。
長々と話した。
「そう言えば私、ローの一味のみんなに会ったことないよね」
「そうだな」
「一度会ってみたいな…」
その時、ローがふと口角を上げたように見えた。
「あいつらもお前に会いたがってたから、そのうち会わせてやるよ」
笑ったとこ…初めて見た。
気がつくとじっとローを見つめていた。
「何だ?」
「あ…う、ううんっ。何でもない」
何か…鼓動まで早くなってる気が…。
そんな恥ずかしさに慌てて目を逸らした。
あれ…?
“あいつらもお前に会いたがってた”って。
私も、彼らもお互いを知らない筈なのに、どうして向こうは会いたがっているのだろう…?
クルー
ローがみんなに私のこと話したのかな?
(…そんな訳、ないよね…)
そしてワインを一口口にした。