□馨
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「おはよう!サンジ君!」
「ツバキちゃん、おはよう」

爽やかな朝。
太陽のような笑顔でダイニングに現れた早起きのツバキちゃん。
1日を明るくしてくれる彼女の存在が、俺にとってとても特別なものになっていることは言うなでもない。

「あ!今日の朝サンドイッチ?!すごいカラフルで可愛いし、美味しそう!」
パタパタと足音を立てながらキッチンに入ってきた。
盛り付けされた皿を見て、身を乗り出す形で目を輝かせる。
そして俺の返事を待つように、真ん丸の大きな目をこちらに向けた。

(…か、可愛いっ…!)

その愛らしさに、震える手を誤魔化すようにお玉を握り噛み締める。
隣で無邪気な微笑みを浮かべる理由は、このサンドイッチ。
だが、男としては自分に向けられてるものではないかと、想像を膨らませてしまうものだ。

「あぁ、ありがとう」

俺は彼女に笑顔を返すと、満足そうにして席につく。
もう一品のスープを煮込んでいるが、背後から感じられる彼女の視線に落ち着かないでいた。

「ツバキちゃん?」
「何?」
「そんなに見られると、照れるな〜♡なんて…」
「あ、ごめんね。でも作ってるところ見てるだけだから気にしないで〜」

(うーん…俺の心が持たないんだけどな…)

スープをお玉でかき混ぜながら気を紛らわして、軽くタバコを吹かした。


朝食を終えれば各々やりたいことをし始める。
はしゃいでるやつもいれば、筋トレしてるバカもいる。
そうしていつも船の上の1日を過ごす。

俺は甲板で女子会を開いているレディたちのために、ドリンクを作っていた。
ナミさんに許可をもらい、今日は果汁100%のスペシャルみかんジュース。
それをトレーに乗せて運ぶ。
キッチンを出て甲板に向かう階段を降りながら、直ぐ目に留まる想い人。
ナミさん、ロビンちゃんと三人でテーブルを囲んで、楽しそうに話しいてる。

何話してるのか気になった俺は、レディの会話を盗み聞くなんて悪いと分かっていながらも、こっそり奥から耳を澄ませた。

「――私はオランジェットが苦手なの」

恐らくお互いの苦手なもの話をしているようだった。
(ああ、ナミさんはフルーツはそのまま食べたい派だからなぁ…)
前に聞いた話を思い浮かべる。

「ツバキはよく食べるけど、苦手な食べ物ってあるの?」
ナミさんはツバキちゃんに質問を投げ掛けた。
「ない!!」
「即答!」
「ウフフ」
その答えに、ロビンちゃんもクスクス笑っている。
彼女に“苦手な食べ物”がないことくらいは把握してた俺はほくそ笑んだ。

「じゃあ何か苦手なものはないの?」
すると、話は直ぐに食べ物からモノに切り替わる。
「苦手なものかぁ…あまり思いつかないけど…」
「1つくらいあるでしょ」
「うーん…そうだなぁ」
顎に手を置き、空の方向を見ながら考え込んむ彼女の表情も可愛いもんだ。

俺は好奇心のまま、階段下に腰を掛けタバコを吹かす。
ツバキちゃんの苦手なものって一体なんだ??
(オバケとかだったら可愛いな〜♡)
その時は俺が守る!!
…なんて想像しているところ、彼女は思いついたのか口を開いた。


「強いて言うならー…“タバコの臭い”とか?」


(えええええ!!?!??!)
初めて聞いた、想い人の苦手なものが…。

「アハハッ、それじゃあサンジ君に近づけないじゃない」
「えへへ…それはそうなんだけど〜…」
ナミさんは冗談混じりに俺の名前を出して笑うが、まさに今その冗談が心臓に針を立てている。

…タ、タバコの臭い…。

膝の上に乗せていたトレーを持つ左腕が、ガクッとずり落ちるほど落胆した。
「!?…おいおい、どうしたんだよサンジ」
階段を通りかかったウソップ。
「俺……禁煙する…」
「ええぇ!?」

俺は、禁煙する…!今からだ!!!
彼女に嫌われないために…いや、俺を好きになってもらうために!!
心の中でもう一度宣言した。

 
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