□狼の嘘
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なぜ私は、彼をちゃんと見ていなかったの?



彼の気持ちが、 ワタシ ≠ノはないことに。




女と捕らえたのは私じゃない。


彼が見ていたのは別の娘だった。




きっと私とは似ても似つかない程。

            
明るくて楽しくて、可愛い人なんだ───。



「……何か、ゾロさん……最近冷たくないですか…?」


「あ?別にいつもと同じだろ。俺はぐだぐだ長ェのが嫌いなだけだ」


ゾロさんの態度は何か素っ気ない。


「さっさと会話、終わらせたいってこと?」

「簡潔にいえばそうなるかもな」


「わ、私のこと……嫌いってこと…?」

「嫌いとは言ってねェだろ…」


呆れたようにこっちを見て、そのあと、少し照れたように言う。



「…それ以上に、大事なことがあんだよ」



聞いてはいけないような気もしたが、どうしても知りたかった。




  あなたの全てが
ゾロさんの「大事なこと」が。




───知りたいの。





「大事な……ことって…?」






「野望のことを、大事にしてェと思わせるくれる女のことだ」





私はこの時、悟った。


「す、好きな人……?」



「そうだな。……すげェ、好き…」



彼は最初から私のことなんて眼中にない、と。

そのことに。




 ─なんて気づくのが遅すぎたのかしら─




『好き』なんて、そんな瞳をして言わないで



私だけを見て








───なんてこと。


「そ、そっか…!とにかく、…その人は幸せ者ですね、好かれて…」





言えないよ、そんなコトバ。

 
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