表
□狼の嘘
2ページ/3ページ
なぜ私は、彼をちゃんと見ていなかったの?
彼の気持ちが、 ワタシ ≠ノはないことに。
女と捕らえたのは私じゃない。
彼が見ていたのは別の娘だった。
きっと私とは似ても似つかない程。
明るくて楽しくて、可愛い人なんだ───。
「……何か、ゾロさん……最近冷たくないですか…?」
「あ?別にいつもと同じだろ。俺はぐだぐだ長ェのが嫌いなだけだ」
ゾロさんの態度は何か素っ気ない。
「さっさと会話、終わらせたいってこと?」
「簡潔にいえばそうなるかもな」
「わ、私のこと……嫌いってこと…?」
「嫌いとは言ってねェだろ…」
呆れたようにこっちを見て、そのあと、少し照れたように言う。
「…それ以上に、大事なことがあんだよ」
聞いてはいけないような気もしたが、どうしても知りたかった。
あなたの全てが
ゾロさんの「大事なこと」が。
───知りたいの。
「大事な……ことって…?」
「野望のことを、大事にしてェと思わせるくれる女のことだ」
私はこの時、悟った。
「す、好きな人……?」
「そうだな。……すげェ、好き…」
彼は最初から私のことなんて眼中にない、と。
そのことに。
─なんて気づくのが遅すぎたのかしら─
『好き』なんて、そんな瞳をして言わないで
私だけを見て
───なんてこと。
「そ、そっか…!とにかく、…その人は幸せ者ですね、好かれて…」
言えないよ、そんなコトバ。