記憶の中の緋色

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オーセンティックバーの“rencontre(ランコントル)”に入ったアイリスと赤井はカウンター席へ案内された。


「いらっしゃいませ」

バーテンダーはグラスを磨いていた。


アイリスと赤井はイスに座った。


「まだ調整段階の部分もありますが 楽しんでいってくだいませ」

ウェイターは一礼して 去っていった。



「何にいたしましょうか?」

「アイリスは何を飲む?」

「じゃあ まずはジン・トニックで」

「フッ。 俺も同じ物を」

“ジン”…


「かしこまりました」


バーテンダーはジン・トニックを作り始めた。


「秀がカクテル飲むなんてすごい珍しい」

「そうか?」

「だって ウイスキー党だったから…」

「たまには一緒のものを飲むのもいいかと思ってね。 それより こうして一緒にバーで飲むなんていつ以来だ?」

「…わからない。 いつも私の屋敷でフォルシオンとラジャイオンが作ってくれるから」

「そうだな」

「………」

「………」

「…秀」

「なんだ?」

「どうして 髪切ったの?」

「………」

【お待たせしました。 ジン・トニックでございます】


アイリスと赤井はジン・トニックが入ったグラスを持った。

「「乾杯」」

お互いにグラスを少し上げて 一口飲んだ。


「うん♪ 美味しい」

「…やっと笑ったな」

「え?」

「俺と再会してから ずっと浮かない顔をしていた」

「…そんなつもりはなかったんだけど…ごめんね…」

「いや 俺もなかなか連絡してやれなくてすまなかったな」

「うううん」


アイリスは赤井の肩に頭を乗せた。

「…こうして会えたからいい」

「…そうだな」

赤井はアイリスの頭にキスをした。




「そうそう 今日ね、夢想動物公園に行ってきたんだ」

「お前がオーナーをしている動物園だな」

「うん。 そこでね 少し前にホワイトタタイガーの赤ちゃんが産まれて もう少しで公開になるんだよ。 今日 会ってきたんだー!」


アイリスは嬉しそうに話した。


「それでね――…」




アイリスと赤井は色々な話をしながら 数杯のカクテルを飲んだ。



「さっきから私に合わせて カクテルばっかり飲んでるけど、ウイスキーも飲んでいいからね」

「ああ 気にしなでくれ。 久しぶりにカクテルも飲んでみると美味いもんだしな」

「…そう…」

アイリスは疑問に感じていた。




「お次は何にされますか?」

「じゃあ 次はウイスキーにしよう」

「俺に気を遣わなくていいぞ」

「うううん。 私も久しぶりにウイスキー飲みたくなったから。 バーボンとスコッチ どっちがいい?」

「バーボン」

「うん。 フォアローゼス ブラックをロックで2つ お願いします」

「かしこまりました」


バーテンダーはフォアローゼス ブラックをグラスに注いだ。


「お待たせしました。 フォアローゼス ブラックのロックでございます」


アイリスと赤井は一口飲んだ。


「これも美味しい」

「ああ」

「ねえ 秀」

「なんだ?」

「スコッチもバーボンと一緒くらい好きだったよね?」

「…ああ。 だが 今はバーボン一筋だ」

「…そうなんだ」

…そう言えば 前に聞いたことがある…


“ライ”として組織にいた頃、“スコッチ”って言う仲間を失ったって…


そして そのことがきっかけで“バーボン”って言う仲間と絶縁関係だって…


その原因には本当は“バーボン”って言う人にあって、それを秀が語らないで自分のせいになってる…



【アイリス】

「………」

“バーボン”って言う人に本当の事を伝えたら 悲しすぎるし…


…でも…伝えない事によって 秀と絶縁関係のままも悲しすぎるし……


【おい アイリス】

「!?」

「大丈夫か?」

「…ごめん。 少し考え事を…」


アイリスはバーボンを飲み干した。



「お次は何にされますか?」

「いや すまんが、今日はこれで」

「えー! もう一杯だけ」

「だいぶ 酔ってるだろう?」

「でも…」


アイリスはカウンターに突っ伏した。

「最後に…スコッチ 飲みたいだもん…」

「! ………」


赤井はバーテンダーを見た。

「少量のマッカランを…2つ 頼めるか?」

「かしこまりました」


バーテンダーはマッカランをグラスに入れた。

「お待たせしました。 マッカランの水割りとロックでございます」

「ありがとう」

「わーい!」

アイリスはマッカランの水割りを一口飲んだ。


「………」

…“スコッチ”…

赤井も一口飲んだ。

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