隣にいられる幸せ

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約束の日、レイリーが帰ってきた。


「お父さん お帰りなさい!」

「ただいま アイリス。 荷物を片付けてくるから少し待っていなさい」

「うん!」

「……っ…」

アイリスの笑顔にレイリーは胸が痛んだ。



少しして レイリーが戻ってきた。


「お父さん、お母さんの話して!」

「アイリスちゃん その前に夕飯にしましょう? ねえ レイさん?」

「ああ そうだな…」




アイリス達は夕飯を食べ お風呂に入り 落ち着いた頃に話し始めた。


「お母さんってどんな人?」

「ユメリアは優しく 思いやりのある女性で、容姿は君にそっくりで美人だよ」

「…そっか」

アイリスは嬉しそうに笑った。



その後もアイリスはユメリアのことを聞いた。


だが レイリーはユメリアと一緒にいた期間が短いため 詳しくは教えられなかった。


「大したことを教えられなくてすまんな アイリス」

「うううん。 それと最後に…お母さんはどこにいるの?」

「……っ…」

レイリーの表情が悲しみに変わった。


「…お父さん?」

【アイリス! ユメリアさんには“アルカンシエル島”に行けば会えるんだ!】

シャンクスは黙ってしまったレイリーの代わりにそう答えた。


「……アルカンシエル島?」

「恐らく お前が産まれた島だ」

「私が産まれた島…その島はどこにあるの?」

「……アルカンシエル島は記録が貯まらない島で、行くのが難しい島なんだ…」

「…私…もうお母さんに会えないの……?」

アイリスの瞳に涙が浮かんだ。


「っ! ………」

本当のことを伝えるべきか…

たとえ アルカンシエル島に辿り着いたとしても ユメリアは…もう……


「大丈夫だ! 俺たちが必ずアルカンシエル島に連れて行く! だから 泣かないでくれ アイリス!」

「本当…? 本当に…アルカンシエル島に…、お母さんに会わせてくれるの…?」

「…ああ!」

「「「!?」」」

ユメリアが死んでいることを知っているレイリー達は驚いた。


「……ありがとう シャンクス…!」

アイリスは涙を拭って笑った。




「お頭! あんな勝手な約束してどうするんだ!?」

アイリスが眠った後 シャンクスはヤソップ達に問い詰められていた。


「俺が嘘つくことを納得したんじゃないのか?」

「…賛成はした。 だが お頭がついた嘘によってアイリスに期待を持たせたのはかわいそうだろ!?」

「…確かに…そうかもしれないな……。だが それで今、アイリスを傷つけなくて済むなら……俺は嘘つきでも構わない」

「今は傷つかなくても 真実を知ったらその時 傷つくだろ!?」

「! …それは…」

「俺もお頭と同じ気持ちだ」

「ベックマン!?」

「お前らが同じ立場だったらどう思う? 探していた人が既に亡き人だったら……」

「………」

「アイリスはまだ13だ。 まだ子供なんだ。 …これが幼いアイリスにとって一番いいんだ…」

ベックマンは自分に言い聞かせるように言った。


「…私の娘のために心を痛めてくれてありがとう…」

「だが…結局最後に傷つくのはアイリスだ…」

「…そうだな…。 だが いずれは知らなくてはならない……あの子のために」

「……っ…」

「その時は支えてあげてくれ アイリスを…。 あの子が悲しみに押し潰されないように……」

「……ああ」

真実を知った後もアイリスが笑って過ごせるように……

俺が隣で支えてみせる!!




朝になり アイリスは目が覚めた。

「今日 出発だっけ…」


アイリスは起き上がり シャンクス達のもとに向かった。

そして シャンクス達と挨拶を交わし 朝食を食べた。




朝食後 アイリス達はレッド・フォース号を停泊してある39GRにやって来た。


レイリーとシャクヤクも見送りに来てくれた。


レイリーはアイリスを見た。

「アイリス」

「なに お父さん?」

「お前は能力者だ。 海楼石には気をつけるんだよ」

「……“海楼石”?」

「海と同じエネルギーを発する鉱物のことだ。 悪魔の実の能力者の力を無効化できる…」

「…海に入ったのと同じってこと?」

「ああ そうだ。 だから 海楼石に触れた能力者は力が抜けてしまう。 気をつけなさい」

「…うん」




船員たちは船に荷物を詰め込み終えた。


「じゃあ レイリーさん、俺たちはもう行くよ」

「ああ…行ってこい」

「…お父さん」

「娘の船出だ。 笑って見送ってあげなくてはな…」

レイリーは目に涙を浮かべながら言った。


「お父さん 私、ちゃんと戻ってくるから! だから 待っててね?」

「! …ああ。 いつでも待っているよ」

「お父さん 大好き!」

「私もだよ アイリス」

レイリーはアイリスを強く抱きしめた。



アイリス達はコーティングされたレッド・フォース号に乗り込んだ。

そして 船は帆を張り 海中に沈んでいった。

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