アネモネ

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ローに殴られると思ったアイリスは無意識に頭を手で守った。


だが いつになっても痛みは来ず、ローは優しくアイリスを抱きしめていた。

「お前を絶対に殴ったりしねェから…怖がるな」


アイリスは恐る恐るローを見上げた。


ローは優しい表情をしていた。

「ただ心配だったんだ……お前がちゃんと帰ってくるかが…」

「……ロー…私のこと嫌いになったんじゃないの……?」

「! ……そんなつもりはねェが…。 むしろ…」

「え…?」

「いや 何でもねェ…」

お前のことばかり 考えて辛い…


「……でもよかった…。 ローに悪いことしちゃったのかな…って思ってたから…。だから仲直りしようと思って これ…」

アイリスは袋からローのために買ったキャスケットを出した。


「……これをわざわざ買いに…?」

「ローの帽子 ボロボロになってきちゃってるから…」


ローは被っていた帽子を取り キャスケットを被った。


「その被らない方の帽子いらないなら私 もらってもいい?」

「ああ 構わねェが…」

ローはアイリスに帽子を渡した。


「わーい! 大事にするね…」

ローとの思い出…


「ほら 中入るぞ」

ローはドアに向かって歩き出した。


「うん」


ローはアイリスの横を通る際 アイリスの頭に手を置いて 小声で礼を言った。

「サンキュ…」

「!」


そして 何事もなかったように歩いていった。


「…ロー……」

アイリスはローが喜んでくれたことに嬉しくなり 駆け足でローを追いかけた。




アイリスとローが船の中に入ると シャチ達が待っていた。

「アイリス 心配してたんだぞー!!」

「…みんな…! …ごめんなさい……」


シャチ達は笑って出迎えてくれた。

「船長の説教は済んだみたいだから 夕飯にしよう!」



ローにもらった帽子を部屋に置きにいったアイリスを除き、ロー達は食堂に向かっていった。


ローはイスに座り 帽子を取った。


「あれ? 船長 帽子変えました?」


ローはアイリスにもらった帽子を見た。

「……ああ…。 アイリスにもらった」

「よかったすね 船長!」


ローは少し照れ臭そうにしていた。


「花束のお返しですかね?」

「いや 違うみたいだったな…」

「何にしても 大事にしてあげてくださいよ!」

「お前に言われなくてもわかってる シャチ」

「そうですよね〜」

「………」

最近気づいた…


俺の中でアイリスの存在が大きくなってきてる……

アイリスが傍にいねェとダメになっちまうくらいに……



だが…俺は……

…恐らくアイリスを幸せにはできねェ……



なぜなら―――……



そこにアイリスがやってきた。

「遅くなってごめんね」

「大丈夫だよ。 今 配膳したところだから」

「アイリス 早く座れよー」

「あ うん!」


ローはアイリスのためにイスを引いた。


「ありがとう ロー」

アイリスはイスに座った。



そして アイリス達は夕飯を食べ始めた。




…俺は今…死を覚悟して 計画を進めているからだ……



奴を……

ドフラミンゴを倒すために……!!





そして 時が経ち、七武海入りを果たしたローは記録が指し示さない島であり、ドフラミンゴとの関わりがある島 パンクハザードの場所を探し当てた。


「これが…パンクハザード……。 赤犬と青雉が決闘をし 灼熱と極寒の地に分かれた島……」

そして…

ドフラミンゴがカイドウと取引している“SMILE”を作るための原料となる“SAD”を作る島……



ハートの海賊団の船はパンクハザードの海底を進み そして 研究所の前の湖に浮上した。


「キャプテン 一人じゃ危ないよ!」

「俺たちも一緒に行くっすよ!!」

「そうだよ ロー。 みんなも一緒に…「来るな!」」


アイリス達は驚いた。


「これは俺がケリをつけなきゃならねェことだ…。 お前ェらが首を突っ込んでいいことじゃねェ!!」

「……船長…」


ローは背を向けた。

「お前ェらは“ゾウ”で待っていろ」

そして 歩いていった。


「待ってよ ロー!!」

アイリスはローに手を伸ばした。


「来るな!!」

「!」

アイリスは伸ばしかけた腕を戻した。


「アイリス お前の体はもう正常に戻ってる。 この船に留まる理由もねェ…。 お前はもう………船を降りろ」

「…え……」

ローの言葉にアイリスの頭は真っ白になった。


そして その場にしゃがみ込み 涙を流した。

「ロー…ひどいよっ……!! どうしてよ…ロー…!」



ローは振り返りもせずそのまま研究所の中に入っていった。

「すまねェ…アイリス…」

お前はもう…俺といたらダメなんだ……

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