短編A

□似非家族
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「山崎ィ、腹減った〜。」
スパンと襖を開ければ素肌に羽織を纏っただけの山崎と、その膝に寝転がる裾の乱れた浴衣姿の土方さんが居て。
香を焚く匂いに微かに情事のあとの匂いが混じっていて。
「……(ヤバい)…」
耳掻き棒を手に俯いて固まったままの山崎と茫然と俺の方を見る土方さん。
そして固まったまま襖を閉める機会を逃す俺。
迂闊だった…。
こんなシーン見たくなかった。でも最中じゃなくて良かった。流石にダメージが大きいので次から気をつけよう。
「…何で腹減ったってここに来るんだよ。山崎はお前の母ちゃんか。」
だったら土方さんが父ちゃんで両親の情交の形跡を垣間見て気まずい子供が俺か?
「あ…え、えーと。冷蔵庫にうどんが残ってたから、素うどんで良いですか?」
固まってた山崎が立ち上がって手早く着物を着る。
「酸っぱいのは嫌だ。」
酢うどん?そんなもの美味そうな気がしない。
「…え?」
丸い目をする山崎と吹き出す土方さん。
「たっぷりと酢を入れてやれ。」
「も〜、ふくちょー。意地悪言わないで。シンプルな普通のだしのうどんです。」
「それでいい。」
「ふくちょーも食べます〜?」
「ああ。」
「じゃあ、ちょっと待ってて下さいね。直ぐに作ってきますから。」
やっぱ山崎はなんだか母ちゃんぽい。

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