短編@

□世界を占めるもの
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暫くは何の動きも無い日々が続く。
定時連絡で他の監察が受け取ってくるのは白紙の折り鶴のみ。
其れがまだ何も掴めていないという印と、山崎が無事でいる唯一の証拠でもある。
そして十日ほどが経過した頃、監察から報告が届く。

近々行われる攘夷浪士の党がいくつか集まる大規模な集会の決行日とその場所までの詳細な地図。
建物内部の見取り図に関しては、これから山崎以外の監察が調査に赴く。
引き続き山崎は討ち入りの日まで内部の動向を探る事になるだろう。

「それと、これは渡しておこうかと。暗号ではないと思うので。」
そう言って監察から渡されたのは細かく折り目のついた小さなメモ。
いつもは山崎が暗号で書いた落書きのようなものを監察で解読して持ってくるので、直筆の物を渡されるのは珍しい。

(煙草、押入上段)
開いてみると下手くそに書き殴った文字でそれだけが書いてある。
出掛ける前に予備が置いてあるのを言い忘れたんだろう。
部下を使ってまで知らせてくるような事か。
思わずにやけそうになったが、まだ仕事の打ち合わせ中だったので口元を引き締め、姿勢を正した。
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