短編@
□揺らぐ歌(中〜後編の間)
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脹ら脛をゆるゆると揉みながら片手が移動して膝を撫で内股を這いまわる。
足の指を解放した唇が軽く肌に吸い付きながらゆっくりと舌を這わせて足全体を舐め上げていく。
くすぐったいような焦れったいような感覚に、次に来るもっと強い刺激を期待して、全身が微かな痺れを訴える。
「…あっ…ん…」
思わず漏れた微かな声が二人きりの静寂に包まれた空間に響いた。
「嫌いな人間に触れられても、感じるなんて恥ずかしい身体でござるな。」
好きとか嫌いとか、そういう事ではないのだ。信じるものを護る為には排除しなければいけないものがある。それに河上万斉が含まれているというだけの事。
正直、嫌いでも好きでも無いと思う。
はっきりと判断できるほど山崎は河上という人間を知らないのだから。
内股をさすっていた河上の手が、足の付け根を辿って指先で中身を転がすようにそっと袋の部分を揉み、触れられる事を期待するように存在を主張するその部分を避けるようにして下腹と腰に移動する。
「…んっ…」
焦らさないでこっちの方にも触って。
物足りない刺激に自然に腰が揺れ河上の手に熱くなったその部分を打ちつける。
しかし先端を軽く指で弾かれるだけでそれ以上触れられることはなかった。
「もうこんなにベタベタに濡らして。本当にイヤらしい身体だ。前に触らなくてもイケそうでござるな。」
まるで少し責めるように言葉は冷たく発せられるが、河上の眼は愛おしむような暖かい光を湛えている。
どうしてだかは分からないが、河上は本気で自分が好きなんだろう。欲望だけだったら、きっとそんな顔はしやしないだろう。
そういう気持ちが理屈だけで説明のつくものではないと、それだけは理解できる。
己に向けられる強い好意と、高まる射精への欲求に山崎の冷静な判断力はすっかり崩壊してしまったのかも知れない。
河上の手が胸の突起に辿り着き、指先で弾いたり、押しつぶしたりを繰り返す。
唇が首筋に触れ、熱い舌がそっと首から耳を繰り返し舐める。
「…や…」
それだけじゃ足りない。その程度の刺激じゃ全然物足りない。
「何でござるか?」
山崎は河上の手を握って自分自身へと誘導する。
「…ねぇ、ここも触って…。」
ふるふると震える唇から漏れ聞こえる甘えるような声と薄く涙を浮かべる眼にやっと堕ちてくれたかと河上は嗤った。
焦らすように、その張りつめたものをそっと握り、先端から溢れている透明な液体を舐めながら窪みをこじ開けるように舌先でつつく。
「あっ…んんぅっ…」
薄い皮をずらすように少し強めに竿の部分を扱き先端を吸い上げると山崎はシーツをギュッと掴み、全身を震わせながら背中を反らせる。
「一旦、出しておくでござるか?」
答えを待つ前に山崎の中心を握る河上の手の上下する動きが速まった。
「んっ…ま…待って…」
山崎の制止も聞かず追い詰めるように扱き上げる。
河上の手の中で、それは一気に膨れ上がり先端を赤くしてビクビクと波出つように震えた。
「んあっ…や…やめ…あぁっ。」
全身を小刻みに痙攣させて、先端を河上の唇に吸われたまま精を放つ。
銜えられたそれと河上の唇の間から溢れる白濁した液体が下腹部に零れる。
口腔に残った液体を河上はゴクリと飲み干し濡れた唇の周りを舐めた。
「濃いのがたくさん出たでござるな。」
河上の唇から顎に垂れる白濁に山崎は羞恥に顔を赤らめて眼を背ける。
「挿れてもいいでござるか?」
嫌だと言えば止めるんだろうか。
息を荒げて欲に濡れた眼を向けてくる河上を山崎はジッと見つめ返した。
そろそろと河上の足の間に手を伸ばし、くっきりと形が分かるほど窮屈そうにズボンの中で膨れ上がったそれに触れる。
このまま放置されては辛いだろう。
長いコートの前を開いてカチャカチャとベルトを外しファスナーを下げて硬くなった河上自身を露出させ片手でそっと包む。
山崎はそれが自分に反応していると思うと堪らない気持ちになって、自ら進んで河上の頭に手を回してその唇に貪り付いた。