短編A

□顔
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俺、本当にあんたの顔好きだなぁ。


湿り気を帯びた熱い手が頬に触れる。
目を閉じていると思ったのに
最中に視線が交わるなんて
何て気恥ずかしい。
まさかとは思うが
ずっと見ていたのか?
お前と違って
俺にはお前が
初めての恋人なのだから
必死すぎて滑稽だろう。


目ェ閉じろよ。
こういう時に顔、見るなよ。

でも俺はあんたのどんな顔でも
見ておきたい。

俺は自分の顔好きじゃない。
女顔だって、たまに言われるしさ。

俺はあんたの顔に惚れてるんだよ。
それじゃダメなの?

顔…だけ?

あはは、バカだなぁ。
全部だよ、全部好きだって。

なぁ、退。
お前がそういうなら
俺も自分の顔好きになるよ。
だって
この顔じゃなかったら
お前の関心ひけなかっただろ。

きっかけは
そうでもね
中身も好きだってば。

ホントか?

でも総悟の顔が一番好き

やっぱり顔かよ。
いいからサッサと目ェ瞑れよ。
余裕のねぇ顔見られたくねーんだよ。

俺だって余裕なんか無いよ。
いつだって必死なんだから。
若い恋人の相手って大変だなーって。


俺はお前の顔好きじゃないよ。
容貌じゃなくて表情が。
余裕綽々な感じでさ。
もっと俺に溺れてくれよ。
悔しいから言わないけどさ。
 

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