幸せ探しの旅に出よう

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「あ、雪だ…」


カカシとアカデミーを訪問した後、「たまにはゆっくり帰ろうか」なんて提案した矢先の事。
頬に落ちてきた冷たい感覚に上を向けば、雪が降ってきた。


「首元が寒いな…」

「マフラー買えばいいじゃないですか」

「マフラー、あまり好きじゃないんだよね…」


そう言えばカカシは呆れたように溜め息を吐いた。


「早く戻りますよ」

「はいはい」


一足先に走って行ったカカシ。
降り出した雪を見上げた後、オレもカカシの後を追って地面を強く蹴った。





ーーーーーーーーーー


「あ、雪…」

「うん?」


隣を歩いていた伊織の言葉に上を向けば雪が降り始めた。

そういや今日1日寒かったな。
ホワイトクリスマスだってばよ。


「寒いわけですね…。早く帰りましょうか」

「おう、そうだな。夕飯も楽しみだしな!」

「ふふ、今日はミナト様も一緒ですし、何せクリスマスですから。美味しいもの沢山作ります」


ガッツポーズをして、頑張ると言わんばかりの表情に、思わず笑みがこぼれた。


伊織が父ちゃんを名前で呼ぶようになって。
からかい半分でその事に触れて見れば顔を真っ赤にして「い、色々っ…、あったんです…!」と言われてしまい、詳しいことを聞けなかった。

でも何かあったに違いねえ!





「よし、出来た…!」

「どれもうまそうだってばよ」

「ありがとうございます。後はミナト様が帰ってくるのを待ちましょう」


全部の料理が出来上がり、テーブルに並べられる。
お世辞抜きで全部美味そうで、口からは「おお…!」と歓喜の声が漏れた。


「ただいまー」

「ミナト様帰ってきましたね」

「父ちゃん、これ見たら驚くぞ」


ニシシと父ちゃんの反応を考えて笑えば、伊織も嬉しそうに笑った。


「わ、今日は豪華だね」

「腕をふるいましたから」


やっぱり父ちゃんは驚いて、それを嬉しそうに見つめる伊織。


「食べましょうか」


伊織の言葉で父ちゃんも椅子に座り食べ始める。

お世辞抜きで、やっぱり伊織の料理は美味くて、かなり量があった料理も父ちゃんとオレで殆ど食べてしまった。
それを終始ニコニコと見つめる伊織。

何だかその笑顔は、写真に写る母ちゃんに似ていた。





ーーーーーーーーーー


先ほど、伊織ちゃんからクリスマスプレゼントと称してリストバンドを貰った。
嬉しさで舞い上がってのも束の間「ナルト君にも」と言って全く同じ物を渡した伊織ちゃんに、一気に気持ちが地面に叩きつけられた。

所詮オレは伊織ちゃんにとって家族なんだな。
なんてふてくされながら部屋に戻り、ポケットに潜めてあった小さな箱を取り出して呟いた。
この前視察帰りに偶々見つけたネックレス。
淡いピンク色をした宝石が、何故か伊織ちゃんを思い出させて買ってしまった。


「…これ、どうしようかな」


自室で1人、そう呟いた言葉は誰の耳にも入ることなく消えて。
虚しくなった。


伊織ちゃんの特別になりたい。
そう思うようになってから、オレはおかしくなった。
いっそ腕の中に閉じ込めてしまいたいくらいに伊織ちゃんを…。


(……伊織ちゃんを?)


その考えはドアを叩く音で中断された。


「ミナト様、今大丈夫ですか?」

「うん、いいよ」


急いで箱をポケットに忍ばせて返事を返した。


「し、失礼します…」

「どうしたの?」

「あ、の…」


歯切れの悪い伊織ちゃんに首を傾げる。
何かあったのかな。
心なしか頬が赤いような。


「ミナト様、これ…、クリスマスプレゼント、です」


目の前に出されたラッピングされた袋と伊織ちゃんの言葉に目を見張る。


「プレゼント、って…、リストバンドは…」

「リストバンドは色々な方に渡していて、日頃お世話になっているお礼です。これは本当のプレゼントと言いますか…その、」


ミナト様だけの特別なプレゼントです。
顔を真っ赤にして言う伊織ちゃんに、自然と手に力が入る。


(そんなの…、反則でしょ)


中には白いマフラーが入っていた。


「ありがとう…。大切にするね」

「はい…」

「伊織ちゃん、これはオレからのプレゼント」


目の前に箱を出すと伊織ちゃんは驚いた声を上げた。


「でも、」

「伊織ちゃんに似合うと思って選んだんだ。貰ってくれる?」

「わ、綺麗…」


箱を開けて喜びの声を上げる伊織ちゃんに、オレも笑みが零れる。
伊織ちゃんの瞳に宝石が光って、より一層綺麗な輝きを放っている。

喜んで貰えてよかったと安堵した直後。


「ありがとうございます、ミナト様。必ず大切にします」


その笑顔と言葉にオレの中の何かが切れた音がした。


「…伊織ちゃん」

「きゃ、ミナト様っ…!」


小さい。
初めて抱き締めた時も思ったけど、こんな小さい体で沢山の事を支えているんだろうな。
その中に、オレも入っていたら…。なんてのは自惚れかな。


「…伊織ちゃん、それ付けてあげるよ」

「…はい、」


少し俯き加減になり、髪の毛をひとまとめにする伊織ちゃん。
白いうなじが顔を出して。
目眩がしそうになった。


「はい、できた」

「ありがとうございます、ミナト様」

「ん、やっぱりよく似合うね」


伊織ちゃんの白い肌に、淡い桃色がよく映える。


君の特別になれれば、この感情の名前が分かると思ったのに。


(…ザワザワする)


この懐かしくもあり初めての気持ち。
原因が分かる日が来るのだろうか。






(クセになりそうな、極上の味)









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クリスマスです。
NARUTOの世界にクリスマスあるかどうかは分かりませんが、クリスマスです。
 

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